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経済産業省が推進する産業界におけるデジタル トランスフォーメーション (DX)

2022 年 4 月 25 日

「DX (Digital Transformation/デジタル トランスフォーメーション)」という言葉が浸透しつつあるも、まだまだその本質を理解する人はそれほど多くはない状況にあります。そんな中、経済産業省が「DX レポート」を公表し、産業界にメッセージを送り続けています。本記事では、「DX レポート」の内容を解説しながら、その意図であったり、企業が DX を進めるために必要な条件を探っていければと思います。

1. DX レポートとは?

まずは、経済産業省が発信する「DX レポート」の概要を説明します。


1-1. DX レポートは企業における DX 推進の手がかり

DX レポートとは、経済産業省が公開する資料で、主に“企業における DX 推進の手がかり”が記されています。2018 年 9 月に第一弾として『DX レポート ~ IT システム「2025 年の崖」克服と DX の本格的な展開~』というタイトルのレポートを発信。約 8 割の企業がレガシー システムを抱えており、DX 推進ができていない点、さらにこのレガシーなシステムの保守運用に人材とコストがとられていると指摘。このままでは時代に取り残されるばかりか、海外の企業に負けてしまうとの警告を発信しています。それが「2025 年の崖」と言われる経済リスクです。


1-2. 2020 年 12 月、経済産業省が新たに「DX レポート 2」を発表

2018 年 9 月版の「DX レポート」を多くの企業はインパクトを持って受け止めたのですが、まず目先の障害となっている「レガシーなシステムの刷新」にばかり目が行ってしまいました。また、DX レポートの発信以降、国内企業における DX への取り組みが全く進展していないということもあり、2020 年 12 月、経済産業省は新たに「DX レポート 2」を発表。目指すべき真の DX の全容と、そこに向かう道筋を具体的に示しました。それぞれのレポートの詳細については、3 章以降で説明します。

 経済産業省庁舎外観

2. なぜ経産省は DX を推進するのか

そもそも、どうして経済産業省は DX を推進するのでしょうか。そこにはいくつかの外的要因と内的要因があるものと考えられます。

2-1. ビジネス環境の変化

まずは、ビジネスの多様化があげられます。誰もが実感しているように、昨今、さまざまな産業において新規参入者が現れています。例えば、金融業以外の会社が、ペイメント事業やクラウドファンディング事業などを手掛けるようになりました。また、多様化する消費者のニーズに合わせて、ビジネス モデルも変化し続けています。「モノ消費」から「コト消費」へと消費者マインドは移行し、各種マッチング ビジネスやシェアリング エコノミーなども登場、もはや従来のビジネス スタイルに固執していては、社会のニーズに対応することはできません。新しいビジネス モデルの構築には、やはり経営者が描く事業戦略も含めた DX の推進が不可欠となります。

2-2. システムの老朽化の問題

もちろん、既存の IT システムの老朽化は深刻な問題です。新しいサービスやビジネス モデル、合併や統合などを繰り返す中で複雑化していったシステムを運用し続けることで、高額な維持コストが発生するのみならず、新規事業のスタートを妨げる要因となったり、システム障害などが発生する可能性もあります。これは単なるシステム上の問題ではなく、顧客や消費者に大きな影響を与え、経営の根幹を揺るがす事態に発展するケースも充分に考えられます。

2-3. 諸外国とのデジタル格差

もっとも大きな課題と言えるのが、海外企業から後れを取っている点です。もちろん、DX推進の波は日本のみならず、世界中で広がっていますが、残念ながら日本国内における DX 推進は海外諸国と比べると大きく出遅れています。しかもそれが、ビジネス チャンスを逃している要因になっているという見方もあります。そもそも日本には現場力があり、そのため製造業を中心に発展してきたという歴史があります。ところが、そのために業務スキルが属人化。さらにチームや組織力で仕事を進めてきたため、デジタルという新しい波に乗り遅れたと考えられます。

ノートパソコンの前で頭を抱える男性開発者

2-4. 異例ともいえる民間企業への介入

しっかり担当を割り当てられた業務をこなすうえでは、非常に優秀であっても、新たな枠組みやビジネスモデルを構築することになれていません。そこがデジタルの波の中で新興企業や新しいビジネスが続々と生まれてきたアメリカとの大きな違いといえます。経済産業省が、民間企業の施策に対して、ここまで突っ込んだ発信をするのは、大変珍しいことと言えますが、それだけ日本の産業界における危機的な状況に危惧を抱いていることの表れといえるのではないでしょうか。

3. 2018 年度版「DX レポート」とは?

それでは、2018 年に経済産業省が発表した「DX レポート」の内容について紹介していきましょう。

3-1. 「2025 年の崖」とは?

2018 年に経済産業省が発表した「DX レポート」のキー メッセージは、もしもこのままDX を推進できなかった場合に「2025 年の崖」と名づけられた経済リスクが起こるという警告です。ここでいう「2025 年の崖」とはどういうものでしょうか。まず大前提として、多くの経営者は“将来の成長、競争力強化のためにデジタル技術を活用した新たなビジネス モデルの創出や変革が必要である”ことは理解していても、いくつかの阻害要因があることを指摘しています。

3-2. 既存システムのレガシー化

そのひとつに既存システムのレガシー化、すなわち老朽化があげられます。肥大化・複雑化することで、ブラック ボックスのようになったシステムの改修、増築はかなり困難で、その結果、大きなシステム障害が生じ、経営の根幹を揺るがすことになるとしています。結局、既存システムがレガシー化すれば、するほど、改修資金や人員が必要となり、戦略的な IT 投資が行えないといいます。実際に、一般社団法人日本情報システム・ユーザ協会が 2017 年に実施した「デジタル化の進展に対する意識調査」によると、約 8 割の企業がレガシー システムを抱えていると回答。昨今、主流となりつつある、データ ドリブンなビジネスを進めることができないという課題感を持っているようです。

3-3. DX 推進人材、IT 人材の不足

DX 推進人材、IT 人材の不足も深刻な問題となりつつあります。事業会社の社内にシステムに精通した人材や IT プロジェクトをマネジメントできる人材が足りず、ベンダー企業に依存しているという課題があります。これは、過去に自社システムの設計や運用を、外注企業に丸投げしてきたという歴史があり、きちんと社内システムを理解する人材の育成を行ってこなかったことのツケともいわれています。また、外部ベンダー任せのシステムは、ビジネスモデルが変化するたびに手が加えられ、正確に全体像を把握できる人材がいなくなります。仕様を把握している人材が退職すると、まさにブラック ボックス化。若手のシステム エンジニアがレガシーのシステムを目の当たりして失望し、退職するというケースもあります。

3-4. 情報サービス産業全体に波及する問題

エンジニアの人材不足やシステムのレガシー化といった課題は、単なる一企業の問題ではなく、情報サービス産業全体に波及していると指摘。DX レポートでは、現在情報サービス産業のメイン事業となっている国内システム開発受託事業は、大型開発の一巡やクラウド化の進展によって規模が縮小していくと予想しています。そのため、新たなビジネス モデルの創造や転換を行う必要がありますが、新たなデジタル技術を駆使する人材を確保することが難しく、今後競争力を失っていくのではないかと危惧。それが「2025 年の崖」となると警告しているのです。

3-5. 経済産業省が示す対策とは?

もちろん、経済産業省は、この DX レポートを通じ、ただ警告を発しているだけでありません。「2025 年の崖」を回避し、DX を実現するために講じるべき対策についても言及しています。まずは、経営者がその必要性を認識し、社内の既存システムの全体像を把握する必要があるとし、「見える化」指標と診断スキームを構築することを勧めています。そして、これまで任せっきりにしてきたベンダー企業との新たな関係性を構築し、共にビジネス モデル転換を図る必要があるとしています。両者で新たな関係性を構築し、ワンチームで DX を実現していくべきだと述べています。また、情報サービス業界全体に共通する課題である DX 人材の育成・確保に向けての取り組みは、最重要事項であるとし、どんな人材必要か、求められるスキルはなにか整理をし、対策を講じていくことが急務だとしています。

3-6. 曲解されてしまった「DX レポート」

この「DX レポート」と「2025 年の崖」という言葉は、確かにインパクトを持って、世間、特に企業の経営層に響いたのですが、少し曲解されてしまった面もありました。特に「2025 年の崖」という言葉が独り歩きし、いくつかの課題の中でレガシー システムに起因する課題だけが注目を集めることとなります。すなわち、多くの経営者が「DX とは情報システムの刷新である」と捉えてしまったということです。

現に 2019 年に実施した企業の自己診断によると、約 95% の企業は DX に取り組んでいない、または、散発的な実施に留まっているとの結果が出ています。さらに 2020 年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり  DX の加速が期待されましたが、結局、大きな改善は見られませんでした。取り組んだと回答した企業も多くは、単なるシステムの入れ替えのみ実施している状況です。先に述べたように、レガシー システムの刷新はあくまで手段の一つなので、そこだけに課題意識を持っても意味がありません。そもそもテクノロジーを活用するという前提で、企業としての経営ビジョンや事業戦略が必要で、そのビジョンや戦略併せた情報システムの刷新でなくてはならないのです。

テーブルの上に置かれた紙の上の複数のレポートの束

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4. 2020 年度版「DX レポート 2」とは?

曲解された 2018 年度版「DX レポート」の誤解を解くために登場した 2020 年度版「DX レポート 2」。その内容について解説します。

4-1. DX 推進指標で自社の状態をチェック

あたかもレガシー システム刷新が DX の本質であるとの誤解を解くために、「DX レポート 2」では、さらに具体的に、かつ企業がどのように DX 推進を進めるのか、順を追って細かく説明しています。例えば今回のコロナ禍のような社会変革が起こったときに、「迅速に企業のあり方を変え、価値の高い製品やサービスをお客様に素早く提供できる企業文化にする」ところから始める必要があることを示しました。
企業文化の変革には、当然、現在の自社の状態を客観的に掌握する必要があります。経済産業省は今回のレポートの中で、「DX 推進指標」という 35 項目の質問と、それぞれに 6 段階評価ができるチェック シートを用意。その結果から、経営視点指標の「危機感・必要性を感じているか」「推進・サポート体制が整備されているか」「事業部門と IT 部門の人材の融合が図られているか」などの見える化が可能となります。

4-2. 「ユーザー企業」と「ベンダー企業」の目線

企業が目指すべき方向性を 2 つの目線から示しているのも、この 2020 年度版「DX レポート 2」の特徴とひとつといえます。2 つの目線とはすなわち、デジタル化を実現するために IT ツールを自社で活用する「ユーザー企業」と IT ツールを提供する「ベンダー企業」です。この「DX レポート 2」では、それぞれが目指すべき方向性を具体的に説明しています。端的に説明すれば、ユーザー企業にとって必要なのは、まず自社の現状を正しく分析し、短期間で解決できる課題は IT ツールの導入で早期に解消。まずは DX のスタートラインに立つことが重要だと述べています。ベンダー企業については、下請企業の立場で業務を請け負うのではなく、利益率の高いビジネス モデルを実現するために、ベンダー企業とユーザー企業が協力しながら、ともに DX を推進していくスタンスを持つべき述べています。

4-3. 「業務環境のオンライン化」と「業務プロセスのデジタル化」

「DX レポート 2」では、企業が取り組むべきアクションを、具体的に述べています。例えば、コロナ禍への対応については、大きく「業務環境のオンライン化」「業務プロセスのデジタル化」を提起。業務プロセスは、「OCR 製品を用いた紙書類の電子化」「クラウド ストレージを用いたペーパーレス化」「営業活動のデジタル化」「各種 SaaS を用いた業務のデジタル化」「RPA を用いた定型業務の自動化」「顧客接点のデジタル化」などの手法を用いることを推奨しています。
さらに細分化し、企業が受け入れやすいカタチにしているのも、この「DX レポート 2」の特徴と言えます。例えば、先に紹介した「顧客接点のデジタル化」については、さらに「電子商取引プラットフォームによる EC サイトの開設」「チャットボット等による電話応対業務の自動化・オンライン化」などと分解。各企業の業務や規模に合った選択ができるよう配慮されています。

4-4. DX 推進の具体策

DX 推進の具体策も示しています。例えば、「DX レポート 2」には、「DX は特定の個人が進めるものではなく、企業が一丸となって推進する大規模な取り組み」であると述べられています。そのためには、経営層、事業部門、IT 部門など、社内のあらゆる部署が連携して、ビジネス変革を行う必要があるというのです。また DX を推進するための専門チームを立ち上げることも有効だと説明しています。
さらに IT 投資や人材投入についての考え方も述べられています。例えば、業務プロセスの標準化を進めて、SaaS やパッケージソフトウェアを効率的に活用することで。効率よく仕事を進めることができるとあります。また、「IT 投資の効果を高めるために、業界内の他社と協調領域を形成して共通プラットフォーム化することも検討すべきと」明記されています。共通プラットフォームによって生み出される繋がりが、社会課題の解決と新しい価値提供を可能にすると明記しています。それによって産業変革を常に加速させることができます。

4-5. DX 人材の確保の鍵

課題になっている DX 人材の確保については、「社員が学び続けるマインドセットを持つことができるよう、専門性を評価する仕組みやリカレント学習の仕組みなどを導入すべき」と明記。さらに、副業・兼業を容認する企業文化を醸成し、多様な価値観と触れる環境を整えることも重要なポイントだと説明。政府としても、企業の DX を多角的にサポートする体制が整っていることも記載されています。

5. 中小企業が DX を進めるために

大企業に比べて、リソースが不足しがちな中小企業において、DX を推進するためには、どのようなポイントがあるのでしょうか。

5-1. 中小企業ほど DX との相性が良い

中小企業に DX は必要なのか? と疑問を抱く経営者も多くいるようですが、むしろ中小企業こそ DX が必要だという見解を、経済産業省も述べています。中小企業は DX を推進することで、多くのビジネス チャンスを生み出す可能性に満ちています。それはむしろ、組織が大きいがゆえに変化に対応しづらい、大企業よりも柔軟に変わっていけると考えられています。DX は決して厄介なものではなく、取り組むことで企業の発展に大きく貢献するものです。とくに中小企業は大企業に比べて組織が小さいので、社員全体に DX を推進する意識が浸透しやすいといえます。逆に言えば、この先、DX をしない企業は淘汰される可能性がある、そんな時代に突入しています。

5-2. 経営者自身が自社の価値見つめ直す

中小企業が DX を推進するには、まず経営者自身が自社の価値見つめ直すことからはじめます。自社の差別化要因を見つけ、そこで初めてデータを活用する発想につながるはずです。それが実践的な DX の入口となります。システムの刷新だけに目を向け、直近の課題から入ってしまうと、リモート ワークやテレワークの導入やペーパーレス化といった単純な業務効率化だけにとどまってしまいます。「DX レポート 2」で示しているような DX の本質である経営変革にまでたどり着けません。

ノートにメモをするビジネス パーソン

6. 日本マイクロソフトが企業の DX 推進をサポート

日本マイクロソフトは、「市場・お客様のデジタル トランスフォーメーション (DX)」に注力。クライアントの変革を支援しています。特に中小企業に対し、「ハイブリッド ワークの推進」「ビジネス プロセスのデジタル化」「スタートアップ企業と連携したインダストリー DX」といった 3 領域における支援を行っています。

6-1. ハイブリッド ワークの推進

新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、一気に浸透が進んだリモート ワーク。そんな環境下で活用が進んだのが「Microsoft Teams」です。世界で 1 億 4,500 万人が利用するグループウェアで、その利用者数はここ数年の間、日本の中小企業において 4 倍以上の伸び率で増え続けています。
「Microsoft Teams」にはチャット・通話機能の他、ビデオ会議機能、ファイル共有機能、Office アプリとの連携機能が搭載。スピーディな情報の共有はもちろん、メンバーのスケジュールやタスク管理、ファイル共有などが容易に可能となります。「Microsoft Teams」がよく利用される理由のひとつに、その操作性の高さがあげられます。相手を招待するにはリンクを送るだけ。受ける側もリンクをワン クリックするだけで参加が可能。すぐに会議をスタートできます。「DX リポート 2」にもあるように、まずは身近なツールの活用からはじめるべきです。そういった意味でも、この「Microsoft Teams」は非常にポピュラーなツールであり、「DX リポート 2」に定義された「業務環境のオンライン化」「業務プロセスのデジタル化」のベースとなりえます。

6-2. 相談窓口の設置

DX の推進には、クラウド シフトも不可欠です。日本マイクロソフトでは、全国の中小企業に対し、「Microsoft Teams」を中心としたクラウド活用による DX 推進を支援。キャンペーンやウェビナー、クラウド サービスの導入・活用の支援活動に注力。相談窓口を設置し、リモート ワークやハイブリッド ワークの導入方法、Teams のデモンストレーションなどを案内。中小企業に寄り添いながら、DX 推進を支援しています。

リモートワーク・ハイブリッドワークに適した環境設置のために

リモートワーク・テレワーク・在宅勤務環境を安全・快適に実現するためには、「セキュリティの確保」「Web 会議のためのデバイス選択」「グループワークのためのアプリケーション」など検討する課題も多く、またこれらを潤沢な資金で準備するのではなくコスト削減につなげることが大切です。
これらの達成のための Microsoft 365、Excel の使い方や、リモートワーク・ハイブリッドワーク環境を充実させるために以下の記事が参考になります。

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