1. なりすましメールとは何か
はじめに、なりすましメールの概要とそのしくみについて解説しましょう。
1-1. なりすましメールの概要
なりすましメールとは、実在する組織や知り合い、信頼できる人などを装って受信者を騙すメールのことです。主にユーザーから価値ある情報を奪うフィッシング攻撃に使われる手法で、送信者はメールのヘッダーを偽造して信頼できる相手だと思わせるケースが多くなっています。
なりすましメールの目的は、主にユーザーの持つ金銭や機密情報を盗むことです。メールに添付したファイルを介し、コンピューターに対して悪い働きをするマルウェアに感染させたり、メールに書かれた不正リンクから詐欺サイトに誘導して口座番号やカード番号などの機密情報を取得し金銭を盗み取ったりします。
1-2. なりすましメールのしくみとその例
なりすましメールは、なぜ後を絶たないのでしょうか。その原因は、E メールのしくみにあります。
E メールは、「エンベロープ」「ヘッダー」「本文」の 3 つの要素から成り立っています。
「エンベロープ」は「封筒」という意味で、これが本当に届く宛先と送信元を表しています。
一方で、紙の手紙で本文前に「○○様」「××より」と書いてある部分に当たるのが「ヘッダー」です。
紙の手紙でも封筒に書いてある宛先や差出人と、中の手紙に書いてある宛先や差出人が違うことはあるでしょう。
E メールもこれと同じで、「エンベロープ」と「ヘッダー」の送信元情報が異なっていてもメール送信が可能で、ヘッダーを偽装することでなりすましメールが成り立ってしまうのです。
エンベロープには本当の送信元や宛先が書いてあります。しかし、エンベロープにある本当の送信元ははっきりと見て取れるものではなく、「ヘッダー」の送信元がまず目に付きます。
そのためなりすましメールの送信元は、受信者側が自然に開封するよう、ヘッダーの送信元情報を信頼できそうな企業や団体名などに偽装して送信するのです。
また「ビジネス メール詐欺 (BEC)」のリスクも高まっています。ビジネス メール詐欺とは、自社の経営層や取引先、弁護士など、ビジネス上の関係者を装ったメールを送ることで、メール送信者の口座に支払いを要求する手法です。
詐欺と疑われないよう、業務上実在するメールから情報を盗み取り、巧妙に偽装しています。受信者よりも強い決定権を持つ人物 (上司や経営層など) を装うことで、受信者が要求に逆らいにくい状況を作り出すといった点が特徴です。
たとえば、
- 財務調査が入って通常の口座が使えない
- 極秘の案件で資金が急に必要になった
などのように、重要で緊急性が高い案件を装って海外の銀行口座を振込先に指定してくる場合は、ビジネス メール詐欺の可能性が高いので注意が必要です。