1. ワークライフバランスとは?
ワークライフバランスの定義について整理してみました。
1-1. 「生活」と「仕事」の両立から「相乗効果」を生む
まずは、「ワークライフバランス」の定義から確認しておきましょう。「ワークライフバランス」を日本語に訳すと、「生活と仕事の調和・調整」となります。2007 年 7 月 12 月に「仕事と生活の調査 (ワーク・ライフ・バランス) 憲章」と、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定。この「憲章」には、「ワークライフバランス」が実現した社会の姿を、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域社会などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と定義しています。
では、「生活と仕事の調和・調整」とはどういった状態を指すのでしょう。勘違いしがちなのは「生活と仕事のどちらを重視するか」という取捨選択を迫られているように感じる人がいるかもしれません。ところが、「ワークライフバランス」という言葉が本来意味しているのは、「生活」と「仕事」の取捨選択ではなく、「生活」と「仕事」の両立から「相乗効果」を生むということです。要するに、生活が充実することで、仕事にも集中できてうまくいき、仕事がうまくいくことで、私生活も潤うといったサイクルという意味です。
1-2. ワークライフバランスの歴史
「ワークライフバランス」という言葉はアメリカから生まれました。その言葉が生まれた 1980 年代当時、アメリカでは IT 技術の進歩によって、女性がビジネスシーンで活躍する機会が飛躍的に増加。そこで浮き彫りになったのが、仕事と子育ての両立における課題です。そこで当時のアメリカ政府は「ワーク・ファミリー・バランス」や「ワーク・ファミリー・プログラム」などの施策を打ち出し、優秀な女性たちが子育てと仕事の両立を図れるように支援をしたときに使われたのが「ワークライフバランス」という言葉でした。
やがて、この「ワークライフバランス」という考え方は、子どもの有無に関わらず、すべての男性、女性にとって重要なものであるという認識が広まっていくことに。日本では 1990 年代に入って「ワークライフバランス」という言葉が意識されるようになりました。
1-3. ワークライフバランスは実現できない?
思い出してみてください。1980 年代までは、「24 時間戦えますか?」といった TV コマーシャルが流行るほど、仕事を第一にすることが理想的と考えられていました。ところがバブルが弾け、高度経済成長が終わり、世の中の労働への考え方は変わっていきました。そして最近では政府主導で「働き方改革」が推進され、長時間労働の見直しが進められるようになりました。ここにきてようやく、働く側の人たちの希求と社会の考え方の歩調が揃ってきました。人々が求めるワークライフバランスに国がお墨付きを与えたような形になりました。
要するに、ワークライフバランスという言葉が注目されているということは、すなわち現在の働き方はワークとライフのバランスが成立しない、そのどちらかを犠牲にしなければならないという現状があると考えられます。
1-4. ワークライフバランスの類義語
実は、このワークライフバランスにはいくつかの類似語があります。ワークライフバランスと比較して使われているのが「ワーク・ライフ・インテグレーション」という言葉です。インテグレーションとは統合という意味なので、文字通り、ワークとライフを統合 (インテグレーション) することで双方を充実させることを目的とするものです。仕事と生活を対立的に捉え、その量的バランスを調整する「ワークライフバランス」をさらに進め、双方をパワーアップさせるという考え方です。「ワーク・ライフ・マネジメント」とは、ワークとライフの「時間配分」だけでなく、ライフステージや状況変化に合わせて、ワークとライフの充実を自らが積極的に「マネジメント」し、相乗効果を発揮することを指します。
ライフとワークが逆転している「ライフワークバランス」という考え方もあります。基本的には「ワークライフバランス」と考え方は同じですが、東京都が「ワークライフバランス」に関する優れた取り組みを行っている中小企業を独自に「ライフワークバランス認定企業」として認定しているため、この言葉が浸透しました。
1-5. 内閣府が定める「ワークライフバランス憲章」
この「ワークライフバランス」の考え方は、前述のとおり内閣府が定めている「仕事と生活の調和 (ワークライフバランス) 憲章」の中で「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と定義されています。そして具体的に、「経済的自立が可能な社会」「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」「多様な働き方・生き方が選択できる社会」が実現されていることを指しています。