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ワークライフバランスで働きやすい仕事環境を構築

2021 年 8 月 10 日

私たちが何気なく使っている「ワークライフバランス」という言葉。果たして、本当に正しい意味を理解しているのでしょうか。「働き方改革」や「リモートワーク」というキーワードが飛び交う今だからこそ、改めてその意味や現状、実現のための手段について考えてみたいと思います。

1. ワークライフバランスとは?

ワークライフバランスの定義について整理してみました。

1-1. 「生活」と「仕事」の両立から「相乗効果」を生む

まずは、「ワークライフバランス」の定義から確認しておきましょう。「ワークライフバランス」を日本語に訳すと、「生活と仕事の調和・調整」となります。2007 年 7 月 12 月に「仕事と生活の調査 (ワーク・ライフ・バランス) 憲章」と、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定。この「憲章」には、「ワークライフバランス」が実現した社会の姿を、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域社会などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と定義しています。

では、「生活と仕事の調和・調整」とはどういった状態を指すのでしょう。勘違いしがちなのは「生活と仕事のどちらを重視するか」という取捨選択を迫られているように感じる人がいるかもしれません。ところが、「ワークライフバランス」という言葉が本来意味しているのは、「生活」と「仕事」の取捨選択ではなく、「生活」と「仕事」の両立から「相乗効果」を生むということです。要するに、生活が充実することで、仕事にも集中できてうまくいき、仕事がうまくいくことで、私生活も潤うといったサイクルという意味です。

1-2. ワークライフバランスの歴史

「ワークライフバランス」という言葉はアメリカから生まれました。その言葉が生まれた 1980 年代当時、アメリカでは IT 技術の進歩によって、女性がビジネスシーンで活躍する機会が飛躍的に増加。そこで浮き彫りになったのが、仕事と子育ての両立における課題です。そこで当時のアメリカ政府は「ワーク・ファミリー・バランス」や「ワーク・ファミリー・プログラム」などの施策を打ち出し、優秀な女性たちが子育てと仕事の両立を図れるように支援をしたときに使われたのが「ワークライフバランス」という言葉でした。

やがて、この「ワークライフバランス」という考え方は、子どもの有無に関わらず、すべての男性、女性にとって重要なものであるという認識が広まっていくことに。日本では 1990 年代に入って「ワークライフバランス」という言葉が意識されるようになりました。

1-3. ワークライフバランスは実現できない?

思い出してみてください。1980 年代までは、「24 時間戦えますか?」といった TV コマーシャルが流行るほど、仕事を第一にすることが理想的と考えられていました。ところがバブルが弾け、高度経済成長が終わり、世の中の労働への考え方は変わっていきました。そして最近では政府主導で「働き方改革」が推進され、長時間労働の見直しが進められるようになりました。ここにきてようやく、働く側の人たちの希求と社会の考え方の歩調が揃ってきました。人々が求めるワークライフバランスに国がお墨付きを与えたような形になりました。

要するに、ワークライフバランスという言葉が注目されているということは、すなわち現在の働き方はワークとライフのバランスが成立しない、そのどちらかを犠牲にしなければならないという現状があると考えられます。

1-4. ワークライフバランスの類義語

実は、このワークライフバランスにはいくつかの類似語があります。ワークライフバランスと比較して使われているのが「ワーク・ライフ・インテグレーション」という言葉です。インテグレーションとは統合という意味なので、文字通り、ワークとライフを統合 (インテグレーション) することで双方を充実させることを目的とするものです。仕事と生活を対立的に捉え、その量的バランスを調整する「ワークライフバランス」をさらに進め、双方をパワーアップさせるという考え方です。「ワーク・ライフ・マネジメント」とは、ワークとライフの「時間配分」だけでなく、ライフステージや状況変化に合わせて、ワークとライフの充実を自らが積極的に「マネジメント」し、相乗効果を発揮することを指します。

ライフとワークが逆転している「ライフワークバランス」という考え方もあります。基本的には「ワークライフバランス」と考え方は同じですが、東京都が「ワークライフバランス」に関する優れた取り組みを行っている中小企業を独自に「ライフワークバランス認定企業」として認定しているため、この言葉が浸透しました。

1-5. 内閣府が定める「ワークライフバランス憲章」

この「ワークライフバランス」の考え方は、前述のとおり内閣府が定めている「仕事と生活の調和 (ワークライフバランス) 憲章」の中で「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と定義されています。そして具体的に、「経済的自立が可能な社会」「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」「多様な働き方・生き方が選択できる社会」が実現されていることを指しています。

2. ワークライフバランスの現状

2-1. アンケート結果から見える現状

内閣府 男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室が毎年行っている「企業等における仕事と生活の調和に関する調査研究報告書」の中に、全国に住む 20 代~ 60 代の男女を対象としたサンプル数 6000 人のアンケート調査結果が記載されています。「ワークライフバランスにおいて何を優先したいのか? という設問に対し、男女共に「家庭生活を優先したい」と考えている割合が高く、「仕事を優先したい」という回答者は約 1 割前後にとどまっていました。実際の職場環境についての問いに対して、正社員男性で 5 割以上、正社員女性でも 4 割以上が「仕事が優先」されていると回答しています。すなわち、多くの人が「ワークライフバランスを実現したくても、それがなかなか難しい職場に勤務しているという実態がみえてきます。

2-2. 世界の中での日本の立ち位置は微妙

通勤する人々の足元

2017 年に実施された OECD (経済協力開発機構) 加盟国 34 カ国で調査したワークライフバランスランキングの結果によると日本は 30 位。さらに同機関が 2017 年に実施した「時間あたりの労働生産性ランキング」では加盟国 34 か国中 20 位という中途半端な立ち位置にありました。また日本の年間休日数は祝日も合わせると、イギリス、ドイツ、イタリア、フランスよりも多く、ワークライフバランスも悪く生産性もそれほど良くない、という現状が浮き彫りになっています。

2-3. 日本の「ワークライフバランス」

近年、「ワークライフバランス」がさかんに叫ばれるようになり、日本人の働き方は大きく変化しました。その背景については、いくつかの理由があります。まず、急速に進展する少子化問題に対する危機感があげられます。少子化問題が顕在化することで、将来の労働力人口の減少、年金・医療などの社会制度の崩壊が予測されるようになりました。2004 年に閣議決定された「少子化社会対策大綱」の中にも「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し」が掲げられ、翌年には「次世代法育成支援対策推進法 (次世代法)」が制定。301 人以上の企業に対して、両立を支援するための行動計画の策定が義務づけられることになりました。

2007 年には「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」が設置。先ほどご説明した「仕事と生活の調和 (ワークライフバランス) 憲章」と、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定されました。さらに 2009 年には、「改正育児介護休業法」が公布されました。これらのように少子化に対する政府の危機感が、「ワークライフバランス」を推進する大きな流れを生み出してきました。

また少子化は、当然のことながら労働力不足を引き起こします。今後、生産年齢人口の大幅な減少が予測される中、2018 年度は「人手不足」関連倒産が過去最多となりました。こうした企業の人材確保に対する危機感からも、「ワークライフバランス」への関心が急速に高まっています。なぜなら「ワークライフバランス」を実現することで従業員の退職を防止。採用でも優位に立てますし、在籍する人材の能力を引き出すことにも有効。多くの企業が、人事施策としての「ワークライフバランス」を推進するようになりました。

3. ワークライフバランス実現に必要なこと

ワークライフバランスを実現するには一体、何が必要なのでしょうか。

3-1. 内閣府の指針

内閣府の「仕事と生活の調和」推進サイトでは、仕事と生活の調和を実現するために必要なこととして、以下のような考え方を紹介しています。まず、経営トップのリーダーシップの発揮による職場風土改革のための意識改革、柔軟な働き方の実現、そして目標策定、計画的取組、点検の仕組、着実な実行をあげています。
また、業務の見直し等により、時間当たりの生産性を向上、人物本位による正当な評価に基づく採用の推進、就業形態に関わらない公正な処遇などがあげられ労使による長時間労働の抑制等のための労働時間等の設定、改善のための業務見直しや要員確保の推進および多様な働き方の選択が可能な状況をつくることだと掲げています。
さらに、具体的な策として「正しい評価で採用を行い、雇用形態に関わらず公正な処遇を」「従業員が健康で豊かな時間を持てるようにすること」「多様な働き方の選択」が記載されています。

3-2. 意欲を現場に伝える

もちろんワークライフバランスを実現するには表面的な取り組みではなく、抜本的な意識改革も必要です。まずは会社全体として「しっかり取り組むんだ」という意欲を現場に伝えるところからはじめるべきでしょう。そのためには「情報発信」「見える化」「PDCA」が必要です。

4. ワークライフバランスを実現できる企業

最近の働き方改革の流れに乗っかり、社員のワークライフバランスに配慮した企業も多くなってきました。果たして、どのような企業がワークライフバランスを実現しているのか。その特徴を整理してみました。

4-1. 多様な働き方の選択ができる企業

ダイニングテーブルでノート PC で仕事をする父親とその前に座る母親と子ども

まずは、大前提として多様な働き方の選択ができる企業ほどワークライフバランスが実現しやすいといえます。例えば、在宅勤務、時短勤務制度、リモートワークなどの制度が導入されていれば、個人の事情や希望に合わせて柔軟に働き方を選ぶことができます。なので仕事と家庭の両立も可能となります。

4-2. 社員の労働時間を減らすための取り組み

また、働き方の選択肢以外に、社員の労働時間を減らすための取り組みをしているかどうかも重要で、例えば年間休暇 120 日以上、残業月 20 時間以下といった条件が揃っている企業ほど、ワークライフバランスを重視しています。ほかにも記念日に有給を使える「アニバーサリー休暇」や、独自の長期休暇制度などユニークな福利厚生を整えている企業も増えています。

5. ワークライフバランスのメリット

ワークライフバランスのメリットについて整理しました。

5-1. モチベーションや生産性の向上

ワークライフバランスが取れた働き方では、ライフステージの変化に影響されやすい女性や、柔軟な働き方を望む優秀な人材を確保することが可能です。さらに、社員も心身の健康やゆとりを保つことで、よりよい状態で業務に向き合うことができます。それによる、仕事へのモチベーションや生産性の向上が期待できます。
もちろん、企業のイメージアップの効果もあります。ワークライフバランスが可能になることで、社員の満足度が上がり、社員にとって働きやすい会社という印象を与えることができます。さらに有能な人材の確保・定着にもつながります。

またワークの割合が多いと心身共に疲弊し、スキルアップや自己研鑽を行う時間がとれなくなり、家族や友人との充実した時間も過ごすことができません。これではまったく生産性はあがるわけもありません。

5-2. 企業にとってもメリットがある

ワークライフバランスが可能となっている会社に勤務していると、しっかり休養をとって健康維持も可能となり、自分の時間ができることでスキルアップに励んだり、育児や介護の時間とすることができます。その結果として、仕事への意欲が高まることでしょう。

従業員が健康的な生活をおくることができれば、ミスを減らし、より生産性の高い業務ができるようになります。“ワークライフバランス”といえば、働く人だけがメリットを享受するのではなく企業にとってもメリットがあるものなのです。

6. ワークライフバランスを実現するために活用したい ICT ツール

ワークライフバランスの実現をサポートするグループウエアについて解説します。

6-1. 重要なのはコミュニケーション円滑化

先ほど説明した「仕事と生活の調和 (ワークライフバランス) 憲章」の中に、以下のような記述があります。「ICT 技術等を最大限活用して単位時間当たりの労働生産性を高め、長時間労働を是正しつつ、少ない労働時間でも一人当たりの GDP を維持・向上させる一方、余った時間をワークライフバランスに活用して、家族・子育てや仲間との交流を深める等、豊かな社会を構築すること」。すなわちツールを導入して効率化させることでワークライフバランスを可能とするという考え方です。

リモートワークはワークライフバランスを実現するには最適な対策のひとつです。特に首都圏においては、1 日の通勤時間が往復で 80 分を超えるケースが多く、しかも混雑率 100% を超える路線が大多数を占めるため、ワークライフバランスの実現は程遠く見えます。要するに通勤を無くすことによるストレス軽減とプライベート時間の拡大はワークライフバランス実現に対する効果があるということです。

リモートワークにとって重要なのが社内のコミュニケーションの円滑化と、互いの仕事の進捗を報告しあう制度や仕組みです。大掛かりなシステム改修ではなく、まずは身近なツールをどこまで活用すればリモートワークが可能なのか考えてみるべきです。

6-2. 多機能なグループウエアを活用

ワークライフバランス実現を目的としたリモートワークの必需品としてあげられるのが、コミュニケーション不足を解消するツールです。コミュニケーションの補完、および円滑な情報共有はもちろん、複雑になる労務管理、勤怠管理も「Microsoft 365」に代表される多機能なグループウエアを活用することで課題解決が可能です。

特に活用したいのが、「Microsoft 365」に含まれる Teams です。この「Microsoft Teams」はマイクロソフトが提供しているグループウエアで、チャット・通話機能の他、ビデオ会議機能、ファイル共有機能、Officeアプリとの連携機能があます。「Microsoft Teams」を活用すれば、スピーディな情報の共有はもちろん、メンバーのスケジュールやタスク管理、ファイル共有などが容易に可能となります。「Microsoft 365」および「Microsoft Teams」は、これからの多様な働き方に対応する優れたアプリケーション群といえます。

リモートワーク・ハイブリッドワークに適した環境設置のために

リモートワーク・テレワーク・在宅勤務環境を安全・快適に実現するためには、「セキュリティの確保」「Web 会議のためのデバイス選択」「グループワークのためのアプリケーション」など検討する課題も多く、またこれらを潤沢な資金で準備するのではなくコスト削減につなげることが大切です。

これらの達成のための Microsoft 365、Excel の使い方や、リモートワーク・ハイブリッドワーク環境を充実させるために以下の記事が参考になります。

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