新しい時代の働き方に対応すべく、クラウド PBX の導入を検討
もしもの際の経済的な保障とリスクの分散を提供してくれる生命保険は、私たちの人生設計に欠かせない存在であり、社会の安定的な発展においても重要な役割を担っています。
そんな保険業界においても、デジタル化の波は押し寄せています。海外では保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた「インシュアテック(Insurtech)」という言葉がつくられるほど、テクノロジーやビッグデータを活用した商品、サービス開発やデジタルツールを活用した業務の効率化など、積極的に DX が進められています。
一方我が国の保険業界においては、国内を主なマーケットとしている大手企業が多く、総じて保守的な傾向があり、保険契約者の平均年齢が高いためにデジタルとの親和度も低い、といった特性が指摘されています。結果、海外と比較して DX の推進が遅れがちな業界特性が見受けられます。
グローバル化が進む将来に向けて競争力を保つためにも、IT 人材の育成や規制緩和などは業界全体で取り組むべき課題であり、多くの国内保険会社が DX の遅れに危機感を抱いているといわれています。
2021 年に設立 30 周年を迎えたオリックス生命保険株式会社では、2017 年に制定した「お客さま本位の業務運営方針」に基づいて、お客さまのニーズに適した商品やサービスを提供できる仕組みづくりを進めており、重要な取り組みのひとつとして DX の推進にも力を注いでいます。
同社では、複雑な判断や独創性といった、本来求められる仕事に注力すべく、業務効率化や自動化による全社横断の DX 推進施策を進めています。そこで大きなテーマとなるのが「コミュニケーション」です。社内外とのコミュニケーション手段の刷新により、業務の効率化とコスト削減、さらにその先にあるコミュニケーションデータの有効活用を実現するために、現在 Microsoft Teams 電話の導入を開始しました。
もともと多くの企業がそうであるように、社内のコミュニケーションは主にオンプレミス PBX(Private Branch Exchange/電話交換機)を用いた固定電話によって行われていました。
そんな同社では、2021 年の本社移転と世界を席巻していたコロナ禍を契機として、働き方改革の議論が活発化。その一環として、移転した本社では固定式の席割を廃止してフリー アドレスを導入することになりました。そして、固定電話ではその働き方に対応できなくなる見通しから、ネット回線を利用したクラウド PBX を導入し、今後のクラウド PBX の全社展開を検討し始めました。
固定電話の課題を検証し、社内でのコンセンサスを得る
クラウド PBX 導入の全社展開を主導しているのは、Microsoft 製品の活用推進を担当するオリックス生命保険株式会社 IT ユーザーエンゲージメント部 サービスデスクチームの山下 嵩広 氏。 オンプレミス PBX 利用において生じていた課題をこう振り返ります。
「固定電話のままでは新しい働き方に対応できないのはもちろん、電話機が故障したときの対応や本体の資産としての管理が必要です。また、社員の異動があれば内線番号の付け替えや配線のレイアウト変更など、コストと手間がかかります。さらに調べてみると、どの部門が何台固定電話機を保有して、それらがどのように利用されているのか、管理担当部門もその状況を把握するのに苦慮している状態でした」(山下氏)
各部門との折衝や導入支援を担当したオリックス生命保険株式会社 IT ユーザーエンゲージメント部 サービスデスクチームの上野 理真 氏によると、固定電話での業務に慣れている社員からは使い続けたいという意見も一部であったものの、管理業務を効率化できるクラウド PBX への切り替えに前向きな姿勢を示してもらったとのことです。
「業務や体制の都合で複数のキャリアと契約していたために回線管理も複雑でしたし、固定電話機が買い取りなのかレンタルなのかといった情報の把握にも苦労していました。
DX や多様な働き方への対応を推進してきた背景があるからか、社員の方々には、スムーズかつ協力的に対応いただき、大変感謝しています」(上野氏)
例えば、これまでは異動があるたびに内線番号の付け替えを IT 部門に依頼する業務が発生していましたが、クラウド PBX であれば自部門で受架電できるメンバーをすぐに変更できることを伝えると、よい反応が得られたそうです。
Teams 電話や Teams だけでなく Microsoft 365 の他のツールも包括的にサポートしていただいているので、俯瞰的な支援からアドバイスをいただけるのはありがたいですね。この先も良好な関係性を続けていけることを期待しています
市川 由紀子 氏, IT ユーザーエンゲージメント部 サービスデスクチーム長, オリックス生命保険株式会社
一度は他サービスを導入するも、Teams 電話導入へと方針を転換
同社では Microsoft 365 を展開済みで、さらに働き方改革の一環として Microsoft Teams を業務ツールのプラットフォームとして活用する構想を進めています。すでに Teams によるチャットやビデオ会議は通常業務のなかに組み込まれており、当然 Teams 電話もクラウド PBX の候補のひとつとして上げられましたが、導入時期の問題で見送らざるを得ませんでした。
「本社の移転は迫っており、音声コミュニケーションを途切れさせるわけにはいきません。まずは、アプリで PC やスマートフォンに電話機能を持たせられるソフトフォンを導入することになりました」(山下氏)
こうして同社では、まず本社および IT 本部の本拠地である池袋拠点でソフトフォンの先行利用を開始しました。
「当初はデスクトップ PC で受架電できることを完全に理解していない社員もいましたが、まずは慣れた環境に近づけて、徐々に意識を変えてもらえるように働きかけました」と山下氏。結果として、このソフトフォンの一部導入が Teams 電話の優位性をあらためて印象づける結果に繋がったそうです。
「ソフトフォンの使用を始めた社員に話を聞くと、普段はチャットやチャネルといったTeams のコミュニケーション機能を使っているのに、電話のときだけ違うアプリケーションを操作しなければならない点に多くの人が手間取ると感じていたようです。また、ソフトフォンは固定電話より音質が劣るという意見も見られました」(上野氏)
「Teams 電話であれば、利用中のソフトフォンの機能はほぼ網羅することができます。管理の手間も省けますし、電話中に Teams 内で資料を共有できたり、リモートワーク時に電話対応できたりといったメリットも多く、働き方改革により大きく貢献できると考えました」(山下氏)
Teams 電話であれば、ソフトフォンの機能はほぼ網羅することができます。管理の手間も省けますし、電話中に Teams 内で資料を共有できたり、 リモートワーク時に電話対応できたりといったメリットも多く、働き方改革により大きく貢献してくれると考えました。
山下 嵩広 氏, IT ユーザーエンゲージメント部 サービスデスクチーム, オリックス生命保険株式会社
順次展開により、業務への影響を減らし確実な定着を図る
一挙に全社に導入するのではなく順次展開する理由としては、「IT ユーザーエンゲージメント部の人員で対応できるボリューム感で進めることで、丁寧なサポートと確実な定着を図る狙いがあります」と山下氏。
山下氏と上野氏の上長の IT ユーザーエンゲージメント部 サービスデスクチーム長の市川 由紀子氏によると、業務への支障を最小限にしたい意図もあるといいます。
「まず、各部門によって異なる繁忙期を避けなければなりません。また電話の入れ替えがあることで、各部門の施策や定常業務、営業部門でしたらトップラインに影響を及ぼすわけにはいかないと考えました」(市川氏)
市川氏は、こまめに各部門、各拠点との調整を行うことで未然にトラブルの種を取り除き、スムーズな全社展開ができるよう注力しているといいます。
「私は IT の出身ではありませんから、技術的なことは山下や上野に任せています。その代わり、メンバーからの要望を聞きつつ他部門との折衝や調整をこまめに行うのが自分の役割だと考えています」(市川氏)。こうした周囲のサポートが、安心して業務を進められる大きな要因となっていることが伺えます。
全社展開にあたり、日本マイクロソフトから過去事例の紹介やミーティングでこまやかなサポートを受けられたことに感謝していると山下氏。「“人に合わせたサポート” が私たちには合っていたと思います」と振り返ります。
「私たちは社内のユーザーをサポートしなければいけない立場なので、実際に触って試行錯誤することで自分たちのなかにナレッジを蓄積したいという思いがありました。日本マイクロソフトの皆さんには、私たちの意向に沿って実践的なサポートに重点を置いていただけており、とても助かっています」(山下氏)
「Teams 電話や Teams だけでなく Microsoft 365 の他のツールも包括的にサポートしていただいているので、俯瞰的な視点からアドバイスをいただけるのはありがたいですね。この先も良好な関係を続けていけることを期待しています」(市川氏)
従来の固定電話機と比べて誰から電話がかかってきたのかひと目でわかりますから、どんな要件なのか類推できます。加えて、データを活用して AI に電話のサポートをしてもらえれば、電話対応の負担が減るため、電話での通話に慣れていない若年時の社員にとって、大きな心理的メリットになると思います
上野 理真 氏, IT ユーザーエンゲージメント部 サービスデスクチーム, オリックス生命保険株式会社
音声の業務活用による働き方改革の推進
山下氏は、まだ検証中ではあるものの、Teams 電話の録音機能を活用していけるのではないかと展望を語ります。
「あとから聞き直して電話の内容を確認することもできますし、電話にありがちな“言った、言わない”といった問題の解決策になり得ると思います」と山下氏。さらに、導入済みの Copilot for Microsoft 365 と組み合わせることで録音データによる業務支援も視野に入れています。
録音データをもとに AI によるリマインドやアクション提案が得られるようになれば、ユーザーにとって多くのメリットが生まれると考えています」(山下氏)
またデータ取得のメリットについて市川氏は「誰が誰とどのくらい通話をしているのかを可視化することでパフォーマンスの分析にもつなげられますし、部下をフォローしやすくなると思います」とマネージャーの視点から期待を寄せます。
「Teams 電話は、電話をする習慣を持たないデジタル ネイティブな若手世代にも有益だと思います」と語るのは入社 3 年目の上野氏。「従来の固定電話機と比べて誰から電話がかかってきたのかひと目でわかるので、どんな要件なのか類推できます。加えて、データを活用して AI に電話のサポートをしてもらえるようになれば、電話対応の負担が減るため、電話での通話に慣れていない若年時の社員にとって、大きな心理的メリットになると思います」(上野氏)
「Teams 電話は電話中に話者を追加できる機能があるので、いざとなれば上長が会話に加わることができます。トラブルの予防や軽減にもつながりますし、経験の少ない社員にとっても安心だと思います」と上野氏の意見に同意する市川氏。
「コールセンター専用のシステムと同等とはいかないまでも、より近い機能を実装しており、またその多くの機能が利用部門で任意に利用できることが Teams 電話の魅力のひとつと思います」
「メールやチャットなどのテキストによるコミュニケーションが中心になりつつありますが、音声によるコミュニケーションには相手の感情を推しはかりやすいなどさまざまなメリットがあります。今回、Teams 電話が加わったことで、Microsoft 365 をより一層活用することできるようになりました。音声データを含めた情報をシームレスに活用できるようになれば、業務にいろいろな可能性が広がりますね。」(市川氏)
Microsoft 365 のさらなる活用フェーズとして、Microsoft Power Platform による市民開発への取り組みや Copilot for Microsoft 365 の活用も同時に推進しようとしているオリックス生命保険。その先進的な取り組みから、DX が遅れがちな保険業界のなかで注目を集める存在になりつつあります。
IT 部門のチームワークの良さもTeams 電話のスムーズな展開の大きな要因であることがうかがえた今回のインタビュー。前例の少ないなかでも、良好なチームワークで一歩一歩検証を進め、方針の転換も厭わずに DX に取り組むその姿勢こそが、これからの日本企業に求められるものなのではないでしょうか。私たち日本マイクロソフトとしても、その姿勢を見習い、デジタルの力でご支援し続けていけるように努力を続けてまいります。
Microsoft をフォロー