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2025/1/28

スズキが 約 18,000 名分の Power Apps Premium を購入し全社展開、経営層も巻き込みながら「だれもが DX の担い手」になる企業を目指す

システム開発期間の長さを課題と感じ、ローコード開発ツールの検討を開始。まずマイクロソフト以外のツールを導入しましたが、IT 知識が必要で浸透させるのが困難でした。「他にもっといいツール」を探した結果、最終的にたどり着いたのが Power Apps。最大の海外子会社であるマルチ・スズキが既に活用していたこともあり、グループ全体のローコード プラットフォームとして「Power Apps を第一優先する」ことを決定します。

Power Apps を選定した最大の理由は、学習コストが最も低く、日常的に使っている Microsoft Office との親和性が高いことでした。これに加え、きめ細かい権限管理ができることや、外部システムとの連携が容易なことなどを評価し、Power Apps の有償 Premium ライセンスの導入を決定、本社全従業員分のライセンスを購入しています。市民開発のガバナンスを確保するため、開発されたアプリをクラウドに集約し、IT 部門からすべて見えるようにしています。

学習コストの低い Power Apps を採用した結果、開発者を短期間で育成することが可能になり、すでに 100 名のエバンジェリストが育成されています。またこれに先立ち、社長をはじめとした経営陣も Power Apps によるアプリ開発を体験し、市民開発の原理原則を理解。こうした経営層も巻き込んだ取組みは会社全体の DX 推進にも大きく寄与しました。開発者コミュニティも運営されており、既に 600 名以上の開発者が参加。わずか10 か月間で約 1,500 に上るアプリが作成されています。

Suzuki Motor Corporation

「他にもっといいツール」を探し続けた結果、最終的に出会ったのが Power Apps

1920年に「鈴木式織機株式会社」として設立され、現在では四輪車や二輪車、船外機、電動車いすなどを製造しているスズキ株式会社 (以下、スズキ)。カーボンニュートラル社会の実現と、お客様の立場になった製品・サービスづくりに取り組み、145の国・地域 (24年 3月時点)でビジネスを展開し、中でもインドでは高い市場シェアを持っています。「⼩・少・軽・短・美」「現場・現物・現実」「中⼩企業型経営」という行動理念の下、世界中のお客様の日々の移動を支え、環境にも優しく、いつも身近にあって頼れる生活のパートナーとなる製品・サービスをお届けしていくため、全世界のスズキグループ社員が一丸となって挑戦を続けていきます。

同社でいま急速な勢いで進みつつあるのが、ローコードプラットフォームを活用した業務アプリの市民開発です。

「システム構築の担当者として長年問題だと感じていたのが、システム提供までの時間が長すぎることでした」と語るのは、スズキ ITシステム部システム戦略課長の髙林克憲氏。これまで多くのシステム開発は完成までに 1~ 2年かかっており、できあがったときには業務要件が変わってしまい、追加開発が必要になることも少なくなかったと言います。「そこで着目したのが、既に世の中に数多く登場していたローコードプラットフォームです」。

2015年にはローコードプラットフォーム導入の検討を開始。まずマイクロソフト以外の製品が導入されましたが、どうしても IT知識が必要になり、ツールの癖も強いこともあり、浸透させるのは難しかったと振り返ります。「他にもっといいツールはないのか」という思いで調査を続けた結果、最終的に出会ったのが Power Appsだったのです。

鵜飼 芳広 氏, 常務役員 IT本部長, スズキ株式会社

これからは全社員がデジタルツールを使いこなし、自分たちに必要なものを作るのが当たり前の時代になっていくでしょう。2030 ~ 40 年を見据えながら、全社のデジタルリテラシーを高めていきたいと考えています

鵜飼 芳広 氏, 常務役員 IT本部長, スズキ株式会社

グループ全体の市民開発基盤として「Power Appsを第一優先にする」ことを決定

その正式採用を決定付けたのが、2022年 11月に行われた海外グループ会社との情報共有会議でした。ここでローコードプラットフォームに関する意見交換が行われた結果、スズキ最大の海外子会社であるマルチ・スズキが既に Power Appsを導入していたことが判明したのです。そこでこの会議で「グループ全体として利用する場合には Power Appsを第一優先として活用する」ことが決定されることになります。

ただし、Power Appsの採用を決めた理由は、マルチ・スズキで利用されていたことだけではありません。髙林氏は次のように説明します。

「数多くのツールを調査した結果、Power Appsが最も学習コストが低く、業務部門がアプリを作るのに最適だと感じました。またスズキでは日常的に Officeを使っていますが、これとの親和性が高いことも大きなメリットだと判断。さらにガートナーのローコードツール分野のマジッククアドラントで、マイクロソフトがリーダーであり続けていることも評価しました」。

2023年 1月には「市民開発導入計画」の作成に着手し、同年 4月にトライアル用ライセンスを購入。これと並行して、Power Apps活用における基本方針も以下のように定められていきます。

第 1は、経営層自らが「意識」ではなく「行動」を変えること。そのため後述するように、経営層向けのハンズオンも行われています。第 2が「Simple Work!」というスローガンの下、社内業務を「やめる」「かえる」「システム化」することで、社内業務に費やされる時間を半減すること。そのうち Power Appsは「システム化」を担うことになります。第 3が、業務部門に眠る Microsoft Excelデータを積極的に活用すること。データの構造化と機密性確保も行いながら、Excelを Power Appsに置き換えていくことを目指しました。そして第 4が、ITリテラシーの向上もセットで考えていくことです。「市民開発」推進ではこれが必須であり、デジタル化内製人財の育成にもつながると期待されています。

髙林 克憲 氏, ITシステム部 システム戦略課長, スズキ株式会社

数多くのツールを調査した結果、Power Apps が最も学習コストが低く、業務部門がアプリを作るのに最適だと感じました。またスズキでは日常的に Office を使っていますが、これとの親和性が高いことも大きなメリットだと判断。さらにガートナーのローコード ツール分野のマジック クアドラントで、マイクロソフトがリーダーであり続けていることも評価しました

髙林 克憲 氏, ITシステム部 システム戦略課長, スズキ株式会社

全社展開に最適な環境を作るため有償 Premiumライセンスを導入

これらの方針の下、2023年 7月には「Power Appsワーキンググループ」を発足。Power Apps活用の体制確立に向けた取り組みが本格的にスタートします。ここで、スズキ IT基盤部次世代基盤推進課の大桑匡稀氏と、スズキ ITシステム部システム開発課の森捷太氏が、自ら手を挙げてリーダーに就任。まずはマイクロソフトからの提案に基づき、「黎明期」「確立期」「展開期」の 3フェーズで構成されるロードマップが策定されます。

2023年 9月には「市民開発導入の実行計画」の策定に着手。この中で「活用のために必要な施策」が明確化されていくと共に、全社向けに導入すべき Power Appsのライセンスも検討されています。ここで出されたのが「有償の Premium ライセンスを導入すべき」という結論でした。その理由について、インフラ担当リーダーである大桑氏は、次のように説明します。

「Power Apps Premiumなら、アプリごとにアクセス権を設定でき、Microsoft Dataverseへのデータ格納ができるため、幅広い業務での活用が容易になります。また社内サーバーなどからの接続も可能で、クラウドにある商用サービスやアプリとの接続も行えます。そのため、全社市民開発の基盤としてふさわしいと評価しました」。

2023年 12月には、スズキ本社全従業員の Premiumライセンスを購入。現在では 18,000ライセンスを保持しています。ここで注目したいのが、本格的な全社展開を行う前に、経営層を積極的に巻き込んでいったことです。2024年 1月に「経営層向け DX研修」を開催し、その中で Power Appsによる市民開発を体験してもらう「出張報告アプリ」作成のハンズオンが行いました。

「Power Appsの採用を報告した際に、副社長から『ローコード開発のイメージがわかない、これで何が起きるのかを具体的に知りたい』というコメントがありました」と振り返るのは、スズキ常務役員 IT本部長鵜飼芳広氏。そのためにまずは、経営者自身が Power Appsによる市民開発を体験すべきだと考えたと言います。「そこで役員・本部長を対象に開催していた DX研修の 1コマとして Power Appsの体験もしてもらいました」。

また社長からは「市民開発が必要なことは理解しているが、似たようなアプリが乱立するのは非効率」というコメントもあったと鵜飼氏。この指摘に対応するため、ガバナンスも強く意識したと説明します。そのために、開発されたアプリをクラウドに集約し、IT部門から全体が見える環境を構築。アプリを「個人持ち」にさせることなく、全体で最適化できるようにしていると言います。

大桑 匡稀 氏, IT基盤部 次世代基盤推進課, スズキ株式会社

Power Apps Premium なら、アプリごとにアクセス権を設定でき、Dataverse へのデータ格納ができるため、幅広い業務での活用が容易になります。また社内サーバーなどからの接続も可能で、クラウドにある商用サービスやアプリとの接続も行えます。そのため、全社市民開発の基盤としてふさわしいと評価しました

大桑 匡稀 氏, IT基盤部 次世代基盤推進課, スズキ株式会社

コミュニティへの参加者は 600名を突破、作成されたアプリは 10か月で約 1,500本

2024年 2月には、Power Appsによる市民開発者コミュニティである「The Amusing Community of Power Apps (TACoPA)」も開設。ここで、情報提供のための Microsoft SharePointコミュニティサイト、Q&Aやコミュニケーションのための参加者限定 Microsoft Teamsチーム、参加者専用の開発者環境で提供しました。これに対する思いについて、コミュニティ担当リーダーの森氏は次のように語っています。

「Power Appsは学習コストが低いとはいえ、初めて取り組む人にとっては心理的なハードルがあります。そこで初心者でも楽しく取り組んでもらえるよう、マイクロソフトのパートナーの支援の下、このコミュニティを開設しました。TACoPAという名称も、たこ焼きパーティのように楽しく参加してほしいという思いを込めています」。

2024年 3月からは、週 6回の頻度で「開発者向け相談会」を実施。そのスタートと同時期に、各事業部門で市民開発をリードする「エバンジェリスト」の育成も始まっています。そのための「市民開発者育成プログラム」が、2024年 3~ 5月、同年 5月~ 7月の 2回に分けて実施されました。

森 捷太 氏, ITシステム部 システム開発課, スズキ株式会社

Power Apps は学習コストが低いとはいえ、初めて取り組む人にとっては心理的なハードルがあります。そこで初心者でも楽しく取り組んでもらえるよう、マイクロソフトのパートナーの支援の下、このコミュニティを開設しました。TACoPA という名称も、たこ焼きパーティのように楽しく参加してほしいという思いを込めています

森 捷太 氏, ITシステム部 システム開発課, スズキ株式会社

「参加者募集は改めて本部長経由で行いましたが、ほぼすべての本部から参加者が集まりました。このプログラムではマイクロソフトの支援の下、8時間の Power Apps勉強会を行ったうえで、マイクロソフトのメンターが参加するセルフラーニング型の体験型ワークショップを実施。合計 100名/22チームが、22のアプリを作成しています。その発表会には参加本部の役員・本部長に加え、社長と副社長にも参加していただきました」 (髙林氏)。

このプログラムに参加した 100名は、現在「Power Appsエバンジェリスト」として活躍。Power Appsの DLPポリシーに基づく権限管理の下で、適切な開発が進められるようになっています。既に、フリーアドレス採用部門での座席表アプリや、備品予約のアプリなど、さまざまなアプリを開発。その開発体験について、スズキ ITシステム部グローバル部品プロジェクト課の近藤圭氏は、次のように述べています。

「私は 2024年 4月に入社したばかりで Power Appsも初体験でしたが、Officeとの親和性が高く、Excelの関数も同じように使えるため、すぐに使えるようになりました。最初に作成したアプリも、1週間程度で完成しています」。

TACoPAへの参加者も順調に増え続けています。2024年 11月現在、登録ユーザー数は 600名を突破。テストを含むアプリの合計は、約 1,500本に上っています。「多いときには 1日に 10件ほどの質問が寄せられることもあります」と森氏。「これに対して率先して回答してくださるエバンジェリストも増えつつあります」。

近藤 圭 氏, ITシステム部 グローバル部品プロジェクト課, スズキ株式会社

私は 2024 年 4 月に入社したばかりで Power Apps も初体験でしたが、Office との親和性が高く、Excel の関数に似た数式も使えるため、すぐに操作になれました。最初に作成したアプリも、1 週間程度で完成しています

近藤 圭 氏, ITシステム部 グローバル部品プロジェクト課, スズキ株式会社

「Kickstarterプログラム」の下、今後の長期的なビジョンも明確化

スズキにおける市民開発への取り組みは、これで完了したわけではありません。2024年 7月にはマイクロソフトの「Kickstarterプログラム」に基づくワークショップを開催。エバンジェリストを中心に複数部門の有志が参加し、マイクロソフトの支援の下、半日かけて今後の進め方が検討されました。ここで定められたビジョンが「グローバル TACoPA」です。これは TACoPAをグローバルに拡大することで、スズキグループの誰もが DXの担い手としてデジタルツールを活用し、未知の価値を創造できるようにする、というものです。

その具体的な目標としては、「デジタル人財とエキスパートの育成」「DX人財の地位向上」「無駄な業務をしないことで社員のやりがいを向上」「新しい稼ぎになる業務の創出」「アプリ/データのだれでも使える化」「ブランド力強化」の 6項目を掲げ、それぞれの成功指標も明確化しています。髙林氏は、「DX人財の地位向上の成功指標に『アプリ開発者数が 1,600人 (スズキ単独の全社員の 10%)存在する』を掲げていますが、私としてはこれが最も重要だと考えています」と述べています。

「IT本部だけではなく業務部門もアプリ開発を行うようになれば、全体のスピードは数十倍に高まるはずです」と言うのは鵜飼氏です。これに伴い IT部門の役割も変わり、ガバナンスやセキュリティ、全体最適化に専念できるようになると語ります。「これからは全社員がデジタルツールを使いこなし、自分たちに必要なものを自ら作ることが当たり前の時代になっていくでしょう。2030~ 40年を見据えながら、全社のデジタルリテラシーを高めていきたいと考えています」。

今後は Power Appsだけではなく、RPAとして Power Automateを活用することも検討。また社内向け業務アプリだけではなく、社外の取引先と連携した業務アプリも、市民開発で実現することが視野に入っていると言います。さらに経営の意思決定を高速化するツールとして、AIや BIを積極的に取り入れていくことも考えられているとのこと。スズキの DXは、経営層を含む全社員を巻き込みながら、これからも加速していくはずです。

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