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2025/03/25

KDDI が生成 AI 活用を加速、その 1 つである「ミドル業務革新」では Azure OpenAI Service などの活用で営業準備時間を 約 74% 削減

事業の核である 5G 通信をさらに磨くことで「つなぐチカラ」を進化させ、生成 AI の社会実装にも積極的に取り組んでいる KDDI。2023 年夏には会社横断組織である「KDDI Generative AI (KGA) CoE」を立ち上げ、社内での生成 AI 活用を加速しています。その一環として進められているのが「ミドル業務革新」に向けた取り組みです。KDDI の法人営業では、営業資料の作成や情報収集と整理にかなりの時間が費やされていましたが、この課題を生成 AI で解決することを目指しました。

そのために構築されたのが、Azure に過去の営業資料を取り込み、各ページのスライド画像と要約を生成するシステムです。Microsoft Entra ID でログインして資料検索を行い、検索結果には該当ページのスライド画像と要約を、プレビュー画面には検索キーワードと関連度が高いスライドのページにマークを付与し、必要な情報を短時間で探せます。要約の生成と検索プロンプトの補完には Azure OpenAI を活用し、GPT-4o、GPT-4o mini をユースケースに応じて使い分けています。

このシステムによって情報収集と整理の時間を大幅に削減。1 ユーザーあたりの資料作成における情報収集時間が約 74% 削減されたことがアンケート調査からわかっています。現在は次のフェーズとして、資料作成の効率化を支援する機能と、サマリーを生成する機能の実装および検証を推進中。営業サイクルの高速化や会議時間短縮などが実現できると期待されています。

KDDI Corporation

CoE を設置して生成 AI 活用を加速、その一環として進められている「ミドル業務革新」

「ありたい未来社会」を実現するため 2022 年 5 月に「KDDI VISION 2030」を策定し、事業の核である 5G 通信をさらに磨くことで「つなぐチカラ」を進化させてきた KDDI株式会社 (以下、KDDI)。中期経営戦略では「新サテライトグロース戦略」を打ち出し、「データドリブン」の実践と「生成 AI」の社会実装を積極的に推進しています。社内でも生成 AI の活用を広げていくため、2023 年 5 月に社員 1 万人を対象にした AI チャット サービス「KDDI AI-Chat」をリリース。社内での利用経験を顧客への提案に活かしていくことを目指しています。

しかし「各部門のボトムアップだけでは生成 AI 活用は加速しません」と語るのは、KDDI 経営戦略本部 Data&AIセンターでセンター長を務める木村 塁 氏。そこで 2023 年夏には経営層との合意の上で、会社横断の CoE 組織である「KDDI Generative AI (KGA) CoE」を立ち上げることになったと説明します。

「この CoE は Data&AIセンターが事務局となり、システム環境 Pod やガバナンス Pod、外販ソリューション Pod など、領域ごとの Pod と呼ばれるチームで構成されています。また社内でのユースケースを生み出して検証していくため、複数のユースケース Pod も活動しています」。

そのユースケース Pod の 1 つが「ミドル業務革新 Pod」です。ミドル業務とは、営業フロントとバックオフィスの間に存在する雑多な業務のこと。その中には顧客提案に使われる資料の作成や、打ち合わせの日程調整などが含まれており、汎用的な業務が多いと木村 氏は指摘します。

木村 塁 氏, 経営戦略本部 Data&AIセンター センター長, KDDI株式会社

“私はかつてデータ サイエンティストとして AI に携わっていましたが、その立場から見て ChatGPT の登場は非常に革命的なことでした。しかし OpenAI 社の API にはセキュリティ上の懸念があります。この問題への解をいち早く提示したのがマイクロソフトです。Azure OpenAI Service は、ユーザーの入力内容を学習しない、日本国内リージョンで使えるなど、機密情報を扱うのに適した生成 AI だと評価しました”

木村 塁 氏, 経営戦略本部 Data&AIセンター センター長, KDDI株式会社

「何に時間がかかっているのか」を洗い出したうえで、3 つのフェーズで問題の解決へ

このミドル業務革新 Pod で中心的な役割を果たしているのが、ビジネスデザイン本部です。その中のビジネスイノベーション推進部|DX/AIビジネスグループでグループリーダーを務める高橋 達也 氏は、ミドル業務の課題を次のように説明します。

ビジネスデザイン本部は KDDI のソリューションを法人のお客さま向けに提供していますが、営業準備にかなりの時間がかかっており、調べてみるとお客さまと接している時間は業務全体の 23% 程でした。KDDI は非常に多くの商材を取り扱っており、お客さまごとに最適なご提案をするための情報収集や整理に多くの時間を取られています。この課題を生成 AI で解決して、社内で蓄積した知見をお客様に提案することを目指しています。

ミドル業務革新 Pod がスタートしたのは 2024 年 4 月。まずは本部内でヒアリングを行い、営業準備の中で「何に時間がかかっているのか」を洗い出していきました。その結果わかったことは、資料作成のための情報収集と情報整理にほぼ 5 割の時間がかかっているということです。また資料作成には 3 割、レビューには 2 割の時間がかかっていることも判明しました。

そこでミドル業務革新 Pod は、大きく 3 つのフェーズで問題解決に取り組むことにします。第 1 フェーズは資料検索の効率化、第 2 フェーズは資料作成の効率化とレビュー/共有の促進、第 3 フェーズは資料作成の高度化 (半自動化) です。

第 1 フェーズの開発が始まったのは 2024 年 5 月。その 1 か月半後には β 版をリリース。さらにその改善を進めていき、2024 年 9 月に第 1 フェーズのシステムが完成しています。

高橋 達也 氏, ビジネス事業本部 ビジネスデザイン本部 ビジネスイノベーション推進部 DX/AIビジネスグループ グループリーダー, KDDI株式会社

“ビジネスデザイン本部は KDDI のソリューションを法人のお客さま向けに提供していますが、営業準備にかなりの時間がかかっており、調べてみるとお客さまと接している時間は業務全体の 23% 程でした。非常に多くの商材を取り扱っており、お客さまごとに最適なご提案をするための情報収集や整理に多くの時間を取られています。この課題を生成 AI で解決して、社内で蓄積した知見をお客様に提案することを目指しています”

高橋 達也 氏, ビジネス事業本部 ビジネスデザイン本部  ビジネスイノベーション推進部 DX/AIビジネスグループ グループリーダー, KDDI株式会社

革命的だった ChatGPT の登場、これを安全に使える Azure OpenAI Service を採用

ここで生成 AI として活用されているのが、Azure OpenAI Service です。その採用理由について、木村 氏は次のように説明します。

「私はかつてデータ サイエンティストとして AI に携わっていましたが、その立場から見て ChatGPT の登場は非常に革命的なことでした。しかし OpenAI 社の API にはセキュリティ上の懸念があります。この問題への解をいち早く提示したのがマイクロソフトです。Azure OpenAI Service は、ユーザーの入力内容を学習しない、日本国内リージョンで使えるなど、機密情報を扱うのに適した生成 AI だと評価しました」。

また、実際の開発を担当した KDDIアジャイル開発センター株式会社で、VPoE (技術部門のマネジメント責任者) を務める岡澤 克暢 氏は、次のように語っています。

「これまでも Azure を使っており、Azure OpenAI Service の利用も今回が初めてではありませんが、マイクロソフトの協力的な姿勢によって疑問点を解決しやすく、アプリの作成も容易だと感じています。また Microsoft Entra ID との連携でセキュリティを強化しやすいことや、多くの日本企業が活用している SharePoint Online などと親和性が高いことも、エンタープライズでの利用に向いています」。

生成 AI モデルには「GPT-4o」、「GPT-4o mini」を採用しており、ユースケースに応じて使い分けをしています。営業資料の解析には「GPT-4o」を使用しており、マルチモーダルモデルのメリットを活かした図表を含むスライドの内容理解、資料単位での要約生成やキーワード抽出など、より高い性能が求められる場面で使用します。

一方の「GPT-4o mini」は、検索プロンプトの補完機能で使用しています。
コスト面に優れながらも必要十分な性能であること、さらに応答時間が非常に短いというメリットもあり、開発や運用面だけでなく、サービスを利用するユーザー体験の向上にも貢献していると考えます。

小林 正佳 氏, ビジネス事業本部 ビジネスデザイン本部 ビジネスイノベーション推進部 DX/AIビジネスグループ コアスタッフ, KDDI株式会社

“情報収集の効率化に加えて、パワーポイント資料の作成業務に生成 AI 活用を広げることで、営業サイクルをより高速で回すことを目指しています。例えば、KDDI テイストの資料に仕立てる作業やサマリースライド作成など、定型化できる業務は生成 AI に代替していきます。生成 AI 活用の効果は営業担当だけでなく、標準化されたサマリーが全ての資料にあることで、レビューや会議時間の短縮や質の向上も見込めると考えています”

小林 正佳 氏, ビジネス事業本部 ビジネスデザイン本部  ビジネスイノベーション推進部 DX/AIビジネスグループ コアスタッフ, KDDI株式会社

80% のユーザーが情報収集時間の削減効果を実感、1  人あたりの削減率は平均で約74%

システム構成は図に示すとおり。その内容について、KDDIアジャイル開発センター ビジネスデザイン部 副部長 仙台サテライトオフィス長/POリードの松浦 洋介 氏は、次のように述べています。

「このシステムには、大きく 5 つの特徴があります。まず、事前に SharePoint Online から資料を取得することで、検索時の効率を高めています。次に、各ページのスライド画像と要約が自動生成されるため、内容の把握がスムーズに行えます。また、Microsoft Entra ID を使用したログインにより、セキュリティを確保しながら簡単にアクセスできます。さらに、Azure AI Search を活用したスライド検索機能により、目的の情報に素早くたどり着くことができます。加えて、検索プロンプトの補完機能を搭載しており、ユーザーの検索効率を高めています。検索結果ページではスライド画像と要約が表示され、プレビュー画面では、検索キーワードとの関連度が高いスライドのページにマークが付与されるため、必要な情報を短時間で見つけることができます」。

開発はスプリントを 1 週間に設定したアジャイル開発で実施。その間にユーザーヒアリングを実施して開発内容にフィードバックすると共に、ユーザーへのアンケート調査も行っています。その調査結果によれば、80% のユーザーが情報収集時間の削減を実感しており、削減効果は 1 人あたり約 74% に上ることがわかっています。検索結果としてページのイメージ画像 (スライド) と要約が表示されることで、どの資料が自分に必要なものなのかが、直感的に把握しやすくなったからだと言えるでしょう。

「生成 AI は使ってみないと実際の効果はわかりません」と岡澤 氏。そのため開発チームは KDDI の企画部門や利用部門と密に連携し、ヒアリングによるフィードバックを積極的に取り入れていったのだと説明します。これに対して高橋 氏は「KDDI 側の声を吸い上げてすぐに反映してくれたことに感謝しています」と述べています。

岡澤 克暢 氏, VPoE, KDDIアジャイル開発センター株式会社

“これまでも Azure を使っており、Azure OpenAI Service の利用も今回が初めてではありませんが、マイクロソフトの協力的な姿勢によって疑問点を解決しやすく、アプリの作成も容易だと感じています。また Microsoft Entra ID との連携でセキュリティを強化しやすいことや、多くの日本企業が活用している SharePoint Online などと親和性が高いことも、エンタープライズでの利用に向いています”

岡澤 克暢 氏, VPoE, KDDIアジャイル開発センター株式会社

第 2 フェーズも既にスタート、営業サイクル高速化や会議時間の短縮などに期待

2024 年 11 月には第 2 フェーズである「資料作成の効率化」に向けた取り組みも始まっています。

実装を進めているのは、KDDI テイストの資料に仕立てる機能と、資料を短くまとめたサマリーの作成機能です。これらの効果への期待について、KDDI ビジネス事業本部 ビジネスデザイン本部 ビジネスイノベーション推進部|DX/AIビジネスグループでコアスタッフを務める小林 正佳 氏は、次のように語ります。

「情報収集の効率化に加えて、パワーポイント資料の作成業務の時間にも生成 AI 活用を広げることで、営業サイクルをより高速で回すことを目指しています。例えば、KDDI テイストの資料に仕立てる作業やサマリースライド作成など、定型化できる業務は生成 AI に代替していきます。生成 AI 活用の効果は営業担当だけでなく、また標準化されたサマリーが全ての資料にあることで、レビューや会議時間の短縮や質の向上も見込めると考えています」。

第 2 フェーズの検証はまだ始まったばかりですが、「その効果がある程度見えてきた段階で、外販に向けた活動を本格化していきます」と高橋 氏。また今後は他の本部にも使ってもらうことで、知見の共有化やナレッジの蓄積を進めていくことも視野に入っていると言います。

最後に「これまではミドル業務革新のように重点テーマを決めて取り組みを進めてきましたが、今後は市民開発も加速していきたいと考えています」と木村 氏。生成 AI で何がしたいのか、どのような業務課題を解決したいのかといったアイデア出しを活発に行うことで、生成 AI の活用はさらに加速するはずだと言います。

「社内には Microsoft Power Platform もあり、これと Microsoft Copilot を組み合わせることで、ゼロから作らなくてもさまざまなツールを実現できます。既に開発部門では GitHub Copilot の活用も進んでいます。これらに関する『クライアントゼロ』としての経験も、お客様に積極的に提案していきたいと考えています」。

松浦 洋介 氏, ビジネスデザイン部 副部長 仙台サテライトオフィス長/POリード, KDDIアジャイル開発センター株式会社

“このシステムには、大きく 5 つの特徴があります。まず、事前に SharePoint Online から資料を取得することで、検索時の効率を高めています。次に、各ページのスライド画像と要約が自動生成されるため、内容の把握がスムーズに行えます。また、Microsoft Entra ID を使用したログインにより、セキュリティを確保しながら簡単にアクセスできます。さらに、Azure AI Search を活用したスライド検索機能により、目的の情報に素早くたどり着くことができます。加えて、検索プロンプトの補完機能を搭載しており、ユーザーの検索効率を高めています”

松浦 洋介 氏, ビジネスデザイン部 副部長  仙台サテライトオフィス長/POリード, KDDIアジャイル開発センター株式会社

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