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2025/03/24

JFEスチールが目指すインテリジェント製鉄所 - Microsoft Azure 採用により主要ラインの CPS 化を加速

グローバル鉄鋼サプライヤーとして活躍する JFEスチール。同社が競争力を高めるための DX 戦略で目指すのは、自ら学習し自律的に最適自動操業を行う「インテリジェント製鉄所」だ。実現に向けて、リアルと仮想空間をつなぐデータ統合と CPS 開発・実行プラットフォーム「J-DNexusTM 」の構築が必要だった。

Azure Data Science Virtual Machine および Azure Virtual Desktop により、既存 PC 環境と同等の利便性とコスト抑制を実現するとともに、GitHub Copilot および Azure OpenAI Service などの生成 AI を活用し、研究開発業務の効率化を図った。また、Azure Machine Learning により AI モデルの開発・実装・管理を効率化。さらに、Microsoft Unified Enterprise Support のプロアクティブサービスにより課題解決を支援。

「J-DNexusTM」により、データ準備工数を大幅に削減。また、ハードウェア調達が不要になり、クラウド上での展開が可能になるなど、CPS プラットフォームのメリットを生かすことで、CPS システム構築期間を 30% 短縮。より早く効果を享受できることに加え、インテリジェント製鉄所実現に向けた、主要ラインの CPS 化の加速が可能となった。

JFE Steel Corporation

自ら学習し、自律的に最適自動操業を行う「インテリジェント製鉄所」を目指す

2003 年に、NKK (日本鋼管) と川崎製鉄が統合して発足した JFEスチール。名称には、「日本の鉄鋼 (元素記号:Fe) とエンジニアリング会社」という意味に加え、未来志向を表す「Japan Future Enterprise」の意味が込められています。独自性や機能性の高い“鉄”を製造して世界中に提供し、地球環境保護や安心・安全、社会の発展に貢献。JFEスチールの粗鋼生産量は 2,345 万トン (2023 年度) で国内 2 位、世界 13 位の規模を誇ります。

グローバルで競争力を高めるため、JFEスチールは DX に積極的に取り組んでいます。その姿勢と先進性は、経済産業省の DX 認定制度に 2024 年度を含め 8 回選定されていることからもうかがえます。同社の DX 推進ビジョンは「常に新たな価値を創造し、お客様とともに成長するグローバル鉄鋼サプライヤー」です。自ら学習し、自律的に最適自動操業を行う「インテリジェント製鉄所」を目指しています。実現の鍵を握る製造プロセスの CPS (Cyber Physical System) 化について、同社 DX戦略本部 DX企画部 兼 デジタル化推進部 主査 (※) 愛甲 貴広氏は次のように話します。(※所属・役職は取材当時)

「CPS は、現実の製造プロセス (Physical) におけるセンサーデータや操業データを収集し、それらを製造プロセスの仮想モデル (Cyber) を使ってリアルタイム状態の把握、将来状態の予測を行い、その結果を現実の製造プロセスにフィードバックする仕組みです。この仮想モデルは、データサイエンスモデル、数理・物理モデル、化学・熱力学モデル、統計モデルなどを組み合わせたものです。CPS 化の目的や効果は、歩留り向上、QA (品質保証)・品質向上、生産性向上、リードタイム短縮、トラブル抑止、コストダウン、技能伝承、安全安心強化など多岐に渡ります」(愛甲氏)

インテリジェント製鉄所は、現実の製造プロセスで生じるデータを収集・分析し、製造プロセスの仮想モデルを開発してリアルと仮想を融合する CPS 化がベースとなります。

JFEスチールは、世界最大規模の製鉄所である西日本製鉄所をはじめとする製鉄所・製造所など 6 拠点を有し、主要製造ライン数は 100 以上に及びます。また、複数ラインにまたがる品質管理なども CPS 化の対象です。「インテリジェント製鉄所」は全プロセスを CPS 化し、それらをつなげて仮想空間に製鉄プロセス全体を再現するものです。JFEスチールはこれまでも CPS 化を進めていましたが、スピード感をもって全プロセスを CPS 化するためには、クラウドを活用した CPS プラットフォームが必要でした。このため、データ統合・CPS 開発実行プラットフォーム「J-DNexusTM」構築プロジェクトがスタートしました。

愛甲 貴広 氏, "DX戦略本部 DX企画部 兼 デジタル化推進部 主査(取材時。現:棒線事業部 仙台製造所 設備部 制御室長 )", JFEスチール株式会社

“PoC の検証テーマの確認はもとより、『J-DNexusTM』により CPS システム構築期間を、従来比で 30% 短縮できることがわかりました。データ準備工数の大幅削減とともに、ハードウェア調達が不要となり、クラウド上で展開できるなど CPS プラットフォームのメリットを生かした成果です。より早く効果を享受できることに加え、『インテリジェント製鉄所』実現に向けて主要ラインの CPS 化を加速できます”

愛甲 貴広 氏, "DX戦略本部 DX企画部 兼 デジタル化推進部 主査(取材時。現:棒線事業部 仙台製造所 設備部 制御室長 )", JFEスチール株式会社

品質・製造データを一元管理する基盤「J-DNexusTM」で長年の課題に切り込む

「J-DNexusTM」は、JFEスチールの DX戦略本部主導のもとに JFEシステムズと構築しています。全プロセスを CPS 化する「J-DNexusTM」は、データ統合基盤と CPS 開発実行基盤の 2 つで構成されています。データ統合基盤は、上工程から下工程まで全プロセスにおいて、IT データ (生産実績、製品品質データ) と OT (Operational Technology) データ (センサー、操業データ) を統合し、CPS のためのリアルタイム連携を実現します。一方、CPS 開発・実行基盤は、データを解析し、仮想プロセスを実行する CPS モデルの開発・実行・展開を、クラウド上で一元的に行います。「J-DNexusTM」は、データ準備・解析を効率化し、場所を問わない開発環境を提供することで、全プロセスの CPS 化を加速します。

「J-DNexusTM」は、データ統合基盤と CPS 開発実行基盤の 2 つで構成され、リアルタイムにデータ連携されています。

CPS 開発・実行における従来の課題について、愛甲氏は次のように振り返ります。

「これまでは、多くの研究員が CPS の開発を自分の PC 環境で行っており、開発が属人化している部分がありました。また、計算処理能力を高めるためのハードウェアのスペック更新作業の負荷がかかるなどの調達・運用・保守といった管理負荷の増大や、水平展開の際に計算機を購入して環境を構築する手間と時間も課題でした」(愛甲氏)

愛甲氏は続けて、課題の解決方法についても言及します。

「これらの課題を解決するためには、クラウド化が必須でした。クラウド活用により、誰もが同じ環境で開発・管理・実行まで行えることで標準化が図れます。また、必要な時に必要なだけ柔軟に拡張が可能です。さらに、クラウド上で環境をコピーすることで、速やかな展開が実現できます」(愛甲氏)

愛甲 貴広 氏, "DX戦略本部 DX企画部 兼 デジタル化推進部 主査(取材時。現:棒線事業部 仙台製造所 設備部 制御室長 )", JFEスチール株式会社

“プログラムのソースコードを共有・管理できる GitHub により、複数人による標準的な CPS モデル開発を実現。また、GitHub Copilot の生成 AI によるコーディングアシストにより開発効率の向上も図れました。さらに CPS 開発環境から Azure OpenAI Service を利用可能にすることで、データ解析や研究開発業務の効率化に生成 AI を活用しています。今後は、生成 AI の更なる活用とともに、『J-DNexusTM』に対してアジャイルにアップデート・機能改善をしていく予定です。プロアクティブサービスの利用も継続していきたいと考えています”

庄村 啓 氏, "DX戦略本部 DX企画部兼 デジタル化推進部 主任部員", JFEスチール株式会社

「J-DNexusTM」の CPS 開発・実行基盤に Azure を選択

JFEスチールは CPS 開発・実行基盤を支えるクラウドを複数検討し、Microsoft Azure (以下、Azure) を選択。採用理由は大きく 4 つありました。

1 つ目は、研究員の開発利便性です。従来、研究員は自分の PC 上に開発環境を構築していましたが、データサイエンス仮想マシン Azure Data Science Virtual Machine (以下、DSVM) および Azure Virtual Desktop による Windows サーバの利用により、従来の環境との違いを最小限に抑えることができました。

2 つ目が、運用の容易性です。DSVM には、データ解析や機械学習で利用されるライブラリが一式プリインストールされており、管理者による運用の手間を解消し、ユーザーはすぐに利用を開始できます。

3 つ目は、コストメリットです。DSVM と Azure Machine Learning (以下、Azure ML) には、データサイエンスや機械学習向け環境を提供する Anaconda ライセンスが含まれており、トータルコストで優位性がありました。

4 つ目は、Microsoft 365 との連携です。社内で Microsoft 365 を導入しており、システム間連携や運用の統一化も容易に行えます。

DX戦略本部 DX企画部 兼 デジタル化推進部 主任部員 庄村 啓氏は、セキュリティの重要性について説明します。

「クラウド活用では、セキュリティが基本条件となります。Azure は、JFEシステムズが提供する閉域接続基盤で導入実績があり、この基盤を通じて社内ネットワークからセキュアに接続できることも、採用のポイントでした」(庄村氏)

愛甲 貴広 氏, "DX戦略本部 DX企画部 兼 デジタル化推進部 主査(取材時。現:棒線事業部 仙台製造所 設備部 制御室長 )", JFEスチール株式会社

“プロアクティブサービスでは、サポートリクエストによるリアクティブな個別課題解決とは異なり、マイクロソフトの専任エンジニアを割り当てていただき週 1 回の定例会にて相談や QA に応えていただきました。特に PaaS サービスの選択肢とその組合せは多岐にわたるため、コンテナ基盤、Azure ML、Entra ID など、必要に応じて定例会に同席した各分野のエキスパートからの回答やアドバイスはとても有益でした。プロアクティブサービスにより、構成や設定に関する課題のスムーズな解決とともに、当社の中にノウハウや知見を蓄積できたメリットも大きいと思っています”

庄村 啓 氏, "DX戦略本部 DX企画部兼 デジタル化推進部 主任部員", JFEスチール株式会社

プロアクティブサービスにより専任エンジニアが対応。サービスの構成や設定に関する課題をスムーズに解決

Azure による CPS 開発・実行基盤は、社内ネットワークを延伸した閉域網上に、仮想マシン (VM)、ストレージ、コンテナ基盤、Azure ML など PaaS サービスを組み合わせて構築されています。導入、実装の難しさについて、庄村氏は言及します。

「CPS 化の対象となるプロセスはさまざまです。多種多様な要件に対応するプラットフォームの構築では、豊富なノウハウや知見が必要となります。当社も JFEシステムズも、機能やそのドキュメントが多岐にわたるクラウド ネイティブなサービスを組み合わせたシステム構築経験が少なく、苦戦することが予想されました」

そこで Microsoft Unified Enterprise Support のプロアクティブサービスを活用しスムーズな課題解決を図りました。「プロアクティブサービスでは、サポートリクエストによるリアクティブな個別課題解決とは異なり、マイクロソフトの専任エンジニアを割り当てていただき週 1 回の定例会にて相談や QA に応えていただきました。特に PaaS サービスの選択肢とその組合せは多岐にわたるため、コンテナ基盤、Azure ML、Entra ID など、必要に応じて定例会に同席した各分野のエキスパートからの回答やアドバイスはとても有益でした。プロアクティブサービスにより、構成や設定に関する課題のスムーズな解決とともに、当社の中にノウハウや知見を蓄積できたメリットも大きいと思っています」(庄村氏)

「J-DNexusTM」は、2023 年度に PoC (概念実証) を実施する際に構築した環境がベースとなっています。PoC では、多工程一貫品質データ解析システムとプロセス CPS の 2 つを対象としました。

多工程一貫品質データ解析システムは、データ統合基盤で操業・品質に関する多工程データの紐づけ処理を行い、リアルタイムデータ連携により CPS 開発・実行基盤で開発した AI モデルを実行し、品質不良の発生要因を推定して操業改善アクションの効率的な実施を可能にするものです。PoC では、データ統合基盤でデータ紐づけの標準化が短期間で実現可能であることに加え、CPS 開発・実行基盤上の Azure ML で AI モデルの開発・実装・管理が可能であることを確認しました。

プロセス CPS の PoC では、従来のオンプレミスと同様にクラウドでも求められる要件を満たせるのかを検証しました。「JFEシステムズとマイクロソフトのプロアクティブサービスの支援を受け、プロセス CPS に求められる『データ伝送から CPS モデル実行、結果出力 (ガイダンス) までの処理 1 分以内』を実現できました。また、オンプレミスと異なり、クラウドは利用形態によってはコストが嵩んでいくことが課題となりますが、コスト抑制に関してもマイクロソフトから有益なアドバイスを得ることができました」(庄村氏)

CPS システム構築期間を従来比で 30% 短縮。主要ラインの CPS 化を加速

2023 年度に 1 年をかけて実施した PoC の成果について、愛甲氏は話します。

「PoC の検証テーマの確認はもとより、『J-DNexusTM』により CPS システム構築期間を、従来比で 30% 短縮できることがわかりました。データ準備工数の大幅削減とともに、ハードウェア調達が不要となり、クラウド上で展開できるなど CPS プラットフォームのメリットを生かした成果です。より早く効果を享受できることに加え、『インテリジェント製鉄所』実現に向けて主要ラインの CPS 化を加速できます」

PoC で構築した基盤をブラッシュアップし、2024 年 9 月に「J-DNexusTM」の運用を開始。「J-DNexusTMを活用し、多工程一貫品質データ解析とプロセス CPS は全社へ展開中です。実際に利用した現場からは高い評価の声が寄せられています」(庄村氏)

Azure 導入により CPS モデル開発環境の効率化も図れました。

「プログラムのソースコードを共有・管理できる GitHub により、複数人による標準的な CPS モデル開発を実現。また、GitHub Copilot の生成 AI によるコーディングアシストにより開発効率の向上も図れました。さらに CPS 開発環境から Azure OpenAI Service を利用可能にすることで、データ解析や研究開発業務の効率化に生成 AI を活用しています。今後は、生成 AI の更なる活用とともに、『J-DNexusTM』に対してアジャイルにアップデート・機能改善をしていく予定です。プロアクティブサービスの利用も継続していきたいと考えています」(庄村氏)

愛甲氏は今後の展望について、次のように語ります。「第 1 ステップとして主要ラインの CPS 化に取り組みます。また、ガイダンスの先として自動化も進行中です。第 2 ステップでは、各プロセスの CPS をつなげて製鉄所・全社一貫 CPS を実現し、インテリジェント製鉄所を具現化していきます」

JFEスチールがグローバルでさらなる高みを目指すために、インテリジェント製鉄所の実現にはスピードが求められます。マイクロソフトは、Azure の提供のみならず、プロアクティブサービスを通じて同社に寄り添い、共に「J-DNexusTM」を進化させていきます。

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