一億総活躍社会の実現に向けたフレキシブル ワークの叶え方
現在、政府が取り組む一億総活躍社会では、少子高齢化が進むなか、経済を成長させるために、日本人が一丸となって働くことが求められます。しかし、すべての働ける人々が、常に会社で、フルタイムで働けるとは限りません。経営者の皆様にとって、フレキシブルな働き方を受け入れることが求められる時代に移行しようとしています。フレキシブル ワークを導入するには、どのようなリスクに対応すべきなのでしょうか? また、フレキシブル ワークを実現する上で大切なのは、どんなことなのでしょうか。
今回は、フレキシブル ワークへの取り組みについて、マイクロソフトテクノロジーセンター 小柳津にインタビュー。今後、ビジネスを成長させる上で鍵となるワークスタイル変革について、さまざまな角度から話を聞きます。
Windows 95 を見た時に感じたイノベーションの可能性
まずは自己紹介をお願いします。
日本マイクロソフトに入社する前は、大手電機メーカーで汎用機を販売していました。その会社で働いていた時に、Windows 95 のベータ版をみる機会があったのです。その時に、「今後、ものすごいイノベーションが起こるかもしれない」と感じました。当時、汎用機は 10 億円以上の値段がつくほど、高価なものでした。PC は、30 ~ 50 万円だったんです。汎用機を売る私たちからすると、30 万円や 50 万円 PC で、仕事ができるとは思っていなかったのです。
しかし、Windows サーバーと Windows 95 の組み合わせが、すばらしい技術革新をもたらしました。そして、「これがお客さんのビジネスを変える」と確信し、すぐに履歴書を作成。日本マイクロソフトに飛び込みました。
日本マイクロソフトに入社されて、21 年目になりますね。これまでどのような業務に携わってきましたか?
ワークスタイル変革を軸にしたコミュニケーションやコラボレーションの普及に尽力しています。現在、政府が一億総活躍社会の実施に取り組んでいます。一億総活躍社会は、日本人全員が一丸となって、勤労と納税をし、国を支えていくという考え方です。そこで現在、さまざまな会社で、ワークスタイル変革が求められているのです。
数年前までは、ワークスタイル変革という言葉は、ここまで世の中に広まっていなかったです。小柳津さんは、ワークスタイル変革を推進するにあたり、具体的にどのような役割を担っているのでしょうか?
働き方の多様性や、生産性の向上を推進するプロジェクトを担当し、お客様の課題に対するコンサルタントやアドバイスをしています。「あるべき姿を作り、必要なタスクを分解、管理し効果測定をする」という流れを、私たちはお客様に長い間デリバリしてきました。今までのテレワークは、一部の、育児や介護が必要な社員のためのもの。しかし、今は社員全員の生産性をあげることが求められています。昔と比べて、適応範囲や真剣度が変化しているのです。
ワークスタイル変革を取り入れるには、どのようなことが必要になるのでしょうか。
生産性を向上させることを目標にすると、ICT の活用だけでは、うまくまわらないことも起こります。たとえば、ポリシーや制度の変更が必要であれば、日本マイクロソフトのようにオフィスの引っ越しをすることも視野に入れる必要がありますよね。
スマートフォンを買うことやグループウェアを導入することは、あくまでも手段のひとつ。ビジネスにおいて、何を目的とするのかを考える必要があります。必要なタスクの分解や整理、効果測定をきちんとすることも大切です。「雰囲気でワークスタイルを変える」という流れではなく、「ビジネスの成果を定めた上で、どんな段階で到達するのか」という効果測定をするべきなのです。
昔は社員が画一的に働くことが重視されていましたが、ワークスタイル変革では、その概念はなくなっていますね。
私が電機メーカーで働いていたときは、「社員どうしで同じ釜の飯を食う」「同じ部屋で、徹夜で頑張る」このような人間関係を築くことが重要視されていました。ところが今は、自分や相手がどこにいても意見交換や情報共有ができ、意思決定ができる。私たちは、日本マイクロソフトのオフィスで人とかかわりますが、オフィスにいない人たちともかかわります。このように、会社としてワークスタイルが保障されれば、生産性や働きやすさが格段に向上します。これを実際に体現できているのが、日本マイクロソフトの強みでもあります。
政府が掲げる一億総活躍社会の実現に向けて
今はワークスタイルや、ダイバーシティ、フレキシブルなどのキーワードが一般的になってきました。政府も取り組みを強化しています。
政府では具体的な推進者も決まっています。テレワーク特命委員会を設けるなど、4 つの省庁がそれぞれ取り組みを進めているのです。このような働き方をする背景には、わかりやすい理由があるのですよね。まず 1 つ目の原因は、人口の減少です。
2 つ目に深刻なのが、日本人の生産性の低さです。これを放置すると、経済的なポテンシャルがどんどん縮小していきます。今の日本のグローバルのプレゼンスは、経済力に依存しているんですね。日本には核兵器があるわけでもないし、資源などの他のコンテンツがあるわけでもない。経済基盤によって日本のプレゼンスは支えられているのです。
問題を解決するには、移民を受け入れるか、日本人が働くかの 2 つの方法があります。よく考えてみると、正規雇用されている人たちは、厳しい条件を潜り抜けているのですよね。フルタイムで週 5 日働ける、都市部に住んでいて、65 歳以下じゃないといけないなどの条件に達している必要があります。
しかし、今はこのような条件を提示している場合じゃなくなってきました。たとえば、「週 3 日で 1 日 4 時間しか働けず、年齢は 68 歳で種子島に住んでいる」などのフレキシブルな条件を持つような方も、働けるようにならないといけません。このような働き方の多様性が、一億総活躍社会の実現につながるのです。
日本のプレゼンスを保つためには、労働力を増やすか、1 人あたりの生産性を上げなくてはならないのですね。
納税があっても、それ以上に社会サービスを還元しないと国が成り立ちません。働く人だけが増えてもだめで、稼げる人が増える必要があります。付加価値が求められているので、難しい仕事やイノベーティブな仕事ができる人材の割合を増やさなければならないのです。医療費を下げ、納税を期待すると、ただ働くのではなく、稼げる働き方をしてもらう必要がでてきますよね。
一部の社員限定の制度ではなく、全員がフレキシブルに働けることが重要
世界的にみると、日本人の勤労は真面目なので、生産性は低くても、信頼をまだ得ることができています。しかし、このあと落ちていくことを考えると、保てるのかどうかが課題ですね。
日本は、昔から働き方の多様性に関してすごくネガティブなコンセンサスが存在します。その壁を破ろうとしているのが、ワークスタイル変革や一億総活躍社会なのです。
フレキシブル ワークをすべての方々に適用させたい理由が、変わってきているのでしょうか。
この数年で変わってきています。実はテレワークは、一部の社員のお助けプログラムとして、ひとつの業務に対して「それは家でやっていいよ」となることが一般的です。このやり方を否定するわけではないのですが、これをやったからといって、会社の競争力や、生産性が上がるわけではないんですよね。
日本マイクロソフトの社員のように、全員が毎日、必要な時に対話や情報交換ができれば、業務効率も上がります。だれにとっても働きやすいという環境を提供できるのです。
平日の会社に行かないといけない時間に、公共サービスを受けようと思っても、なかなか受けられない人たちが存在します。公共機関に行くためにテレワークにすることをネガティブに感じる方は、まだいらっしゃると思うのですが。
そうですね。でも実際は、公共サービスを待っている時間と、会社の人たちと一緒にプロジェクトをやる時間は共有できるのです。私たちは、テレワークをしながら、区役所のソファで仕事をしていますからね。
そもそも、なぜ日本マイクロソフトはワークスタイル変革をおこなっているのでしょうか?
ビジネスの競争力を上げるためです。マイクロソフトは、ビジネスの成長率が著しく高いです。マイクロソフトは一昔前のブランドだと思っている方も世の中にはいらっしゃいますが、実は成長率が高いのです。売上が増加していますが、社員数はそれほど増えていません。人を増やさず、生産性を上げ、難しい仕事をする。これを根性論でやれと言われても、不可能ですよね。
これをどうやっているのかというと、決断を早めるために物事を標準化し、数字で表し、可視化できるしくみをつくっています。可視化をして物事を決めたら、いつでもどこでもだれとでも関わっていいと決めるのです。この 2 つのしくみが回っているので、生産性の向上が担保されていきます。
リスクを対処するために会社が社員を守るしくみをつくる
ワークスタイル変革には、どんな課題があるんでしょうか?
いかにしてリスクを対処できるかが鍵です。働きすぎや仕事をサボること、情報漏えい、端末の紛失など、そのような課題を 1 つひとつ対処していくことができて、はじめてテレワークをすることができます。
何かに疑念を抱えている、またはリスクを感じている場合、どんなに素敵なオフィスに引っ越して便利なツールを渡しても、使おうとしません。なぜかというと、社員が「使った瞬間に怒られるかもしれない」「服務規定に抵触するかもしれない」と感じる可能性があるからです。
ある意味では、社員に環境を渡すのと同時に、社員がすべてを管理する状況にしてはいけないということになるのでしょうか。
そうですね。会社が社員を守る形を作らなければなりません。「社員の責任です」という一言だけで、リスク ヘッジはできないのです。
日本では、ポリシーに制限をかけるイメージが強いです。日本マイクロソフトでは、ポリシーに制限をかけるよりも、「ここまでならやってもよい」という安心感を持たせることを重視しています。
「Security as a business enabler」という言葉があります。日本の会社は、「寄るな、触るな、持ちだすな」のようなポリシーをつくってしまう。しかしマイクロソフトが提唱するセキュリティは、「セキュアな情報を活用する」という考え方をもとにしています。「セキュアじゃなければ、まともに活用できない」ともいえますね。「使うな」というセキュリティ ポリシーではなく、「安全なものを使う」というポリシーなのです。
安全の意味合いが異なりますね。さきほど、具体的に効果測定をすることに関して悩んでいる方もいらっしゃると思いますが、どんな形で実施することができるのでしょうか?
まず、事業生産性をあげることが必須です。一方、同じくらい社員満足度の調査もします。事業生産性がいくらよくても、社員が泣きながらやっていると、悪化していくのです。日本マイクロソフトも結果をだすまでは苦労しましたが、ここ数年で、両方が向上しています。今は会社として、すごく健康的な状態といえます。
日本マイクロソフトでは、働きがいの向上や、総労働時間の削減、そして女性社員の離職も半分に減少しました。コストに換算できる環境負荷を、マクロ視点で追いかけながら改善したところ、PR の効果にもつながりました。新しい人材をお迎えする際にもすごく反応がよいです。今は、給料の高さやグローバル ポジションよりも、働きがいや多様性の話題のほうが断然評価が高いのです。
生産性とワークスタイル変革がどう紐づくのか、MTC に来られるお客様は具体的にイメージされていますか?
そこまで具現化されていらっしゃらないことがほとんどです。そこで、私たちのノウハウやメソッドを提案させていただき、イメージしていただくのです。
Skype for Business でどこからでも会議に参加
「ワークスタイル変革は、社員が楽に働けるということ」というイメージをもたれる方が多いです。しかし、会社のために実施したほうがよいし、社員の満足度を上げることができる。持続的な好循環に入ることができるのですよね。この考えが根付いてくると、一億総活躍社会もリアリティを帯びてきます。ワークスタイル変革は、社員からすると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
私生活と仕事との距離をぐっと縮めて、両方を行きかうように時間を使うことができます。「仕事 = 出勤」で「オフ = 退社」ではないのです。会議も、会社にいないと出席できませんでしたが、今は Skype for Business でどこからでも参加できます。自宅の書斎だろうと、出張先のホテルだろうと、場合によっては休暇中のハワイにいても問題ありません。満足感やストレス度は、ずいぶん異なります。
日本マイクロソフトでは、今までテレワークという言葉を使っていました。それからフレキシブル ワークという言葉へ変化して、制度の名前も変わりました。テレワークとフレキシブル ワークの 差はなんでしょうか?
テレワークという言葉は、辞書的にとらえると「モバイル」「サテライト」「在宅」などの定義がされています。会社以外の場所という意味ですね。しかし、会社の中で仕事をすることも大事ですし、会社の中で人とかかわることは、とても重要です。
このような概念があるのにも関わらず、「会社に行かない方がよい」というニュアンスで伝わってしまうと、確実に揚げ足を取られてしまいます。テレワークという言葉が広まらないのは、そのような理由があるのです。
ところがフレキシブル ワークは、どこで働くのかということはあまり問題ではなく、たくさんの人とかかわるための働き方です。私たちは、オフィスで人とかかわることをとても大切にしています。「家も含めて、さまざまな場所で働く」と伝えるだけで、受け取り側の感じ方は変化するのです。
経営者の方々自らワークスタイル変革に取り組むメリットについて
マイクロソフトはどのようなテクノロジーで、皆様のフレキシブル ワークを支えることができるのでしょうか?
実は、マイクロソフトの全製品がフレキシブル ワークにかかわることができます。大きく分けて「プロダクトビリティ シナリオ」と「セキュリティ シナリオ」のテーマに沿い、マイクロソフトはさまざまなサービスをご提供しています。
ワークスタイル変革は、経営者の皆様自ら、テーマに取り組むことが可能です。昔は働き方の多様性というと、産前産後の救済プログラムでしかなかったです。そのため、経営者の方は部下に「あとはよろしく」と、任せてしまうことが多かったですよね。しかし、ワークスタイル変革は、働き方の多様性を通じて、「生産性の向上」や「コスト削減」に取り組むことが可能です。
つい先日まで、ワークスタイル変革は、一部の外資系企業が例外的に取り組んでいるイメージが強かったです。しかし今は、たくさんの企業がワークスタイル変革に取り組みはじめています。働き方の多様性に目を光らせている経営者の皆様が、非常に増えているのです。
労務管理や福利厚生のための多様性ではなく、「経営戦略としての働き方の多様性」。これがワークスタイル変革に取り組む上で、一番のポイントですね。
それはすごくわかりやすいですね。経営戦略としての働き方の変革は、今まであまり意識してこなかった方も多いのではないでしょうか。
お客様が抱えているビジネスの課題や、業務の特性、MTC へ来られる方の立場とか役割はさまざまです。効率性や利便性など、さまざまな角度から、日本マイクロソフトの実体験を通じてソリューションを提供していきますので、ぜひ一度 MTC へお越しください。
お客様からすると、「そんなことできるの?」と思われることもあるかもしれません。そのような疑問を解決するためにも、ぜひマイクロソフトへ相談していただきたいです。
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