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業界

最新事例から学ぶ、Copilot の活用シナリオとは?「Microsoft 金融機関向け Copilot for Microsoft 365 セミナー」現場レポート

2023 年 11 月 20 日 (月)、マイクロソフトは品川本社にて「金融業界向け Copilot セミナー」を開催しました。本セミナーでは、11 日 1 日 (水) に一般公開した Copilot についての全体像、具体的な活用方法などをご紹介。本稿では、当日行われた以下のプログラムの概要を紹介します。当日の内容はオンデマンド配信でも視聴可能です。

※オンデマンド配信はこちら

【プログラム】

講演の挨拶~Microsoft の AI 全体戦略と Copilot for Microsoft 365 の位置づけ
金融サービス事業本部 業務執行役員 銀行・証券営業本部長 金子 暁
Copilot for Microsoft 365 の金融機関向けご活用シナリオ
テクニカルスペシャリスト 富澤 聡
Dynamics 365 Copilot/Power Platform Copilot のご紹介/金融機関向けご活用シナリオ
ビジネス統括本部 瀬戸 瞳
Responsible AI と Customer Copyright Commitment
政策渉外法務本部 中島 麻里


講演の挨拶~ Microsoft の AI 全体戦略と Copilot for Microsoft 365 の位置づけ

金融サービス事業本部 業務執行役員 銀行・証券営業本部長 金子 暁


2022 年 11 月に ChatGPT が登場してから 1 年。生成 AI への認知度も高まり、実際にシステムの検討を始める企業が増えた「激動の年」だったと、日本マイクロソフトの金子が、冒頭の挨拶に続いて話します。マイクロソフトでは 2023 年 11 月 1 日に、Copilot を全世界に公開。Copilot という名前には、「人間の副操縦士」という思いが込められています。

マイクロソフトでは、あらゆる生成 AI の機能を追加し、製品を一変させていく取り組みを進めています。金子は「様々な業務のアプリケーションに Copilot を活用することで、劇的に業務の生産性・効率性を上げていくことを支援していきたい」と挨拶を締め括りました。

Copilot for Microsoft 365 の金融機関向けご活用シナリオ

本セッションでは、マイクロソフトの富澤が、Copilot for Microsoft 365 (旧Microsoft 365 Copilot) の位置付けと機能を紹介し、実際にどのように活用できるのかをデモンストレーションしました。

テクニカルスペシャリスト 富澤 聡


副操縦士として身近な存在である Copilot

富澤は、はじめに「Copilot for Microsoft 365」の位置付けについて紹介。Word、Excel、PowerPoint、Teams、Outlookなど、日常業務で使用しているツールの動線上に AI が溶け込んでくる時代が来ると話し、「より身近な存在として Copilot が強い味方になる」と強調しました。Copilot はあくまで副操縦士であり、最終的なビジネスの判断は人間自身が下していくことが必要ですが、24 時間 365 日いつでもそれを支援してくれる存在であると話します。

次に、実際に富澤が業務で使用している Copilot の機能を紹介するデモンストレーションを行いました。

・【銀行業界向け】Teams を活用したオンライン会議の要約、発言回数・発言率の数値化。
・【証券業界向け】Word、PowerPointを活用した資料の自動作成。
・【生損保向け】Excelを活用したデータからインサイトを得るデモ。

Microsoft Teams の Copilot 機能を活用することで、不参加のオンライン会議の内容をキャッチアップする時間を大幅に短縮することができます。また、富澤は「社内のデータベースにアクセスできる点が Copilot の大きなメリット」と話します。Word、PowerPoint、Excelでは、プロンプトを入力するだけで資料を自動生成することも可能です。

※Excel は英語のみ対応。2024 年の 1 月から 3 月の間に日本語対応予定。

Microsoft 365 が使えている環境であれば、ネットワーク環境を変更せずに Copilot を利用することができます。ただし、Copilot を利用するためには、Microsoft 365 Apps が最新チャネルであることが必要です (2023 年 12 月からは、月次チャネルでの対応も可能となりました)。

Copilot で実現する生産性革命

先行利用しているユーザーからは、「毎日使っているツールで AI を使えるのは非常にありがたい。画期的だ」「文章生成系はかなり精度が高く、Teams 会議の要約だけで、ROI を見込めるのではないか」というお声をいただいています。

Copilot を通じて生産性革命を実現していくためには、一般の行員・社員の方々が日常業務でどれだけ AI を活用できるかが鍵です。今まで外部のお客様向けの AI 活用がメインだったものを、行員・社員の方まで広げることで、無駄な業務にかかる時間の削減ができます。富澤は「タイムパフォーマンスを上げていくための、メインになるのが Copilot for Microsoft 365 です。確実にパラダイムシフトを起こす製品になると信じています」と話します。

最後に、富澤は開発者・IT プロフェッショナル向けの年次会議「Microsoft Ignite」で発表された最新情報について紹介し、本セッションを締め括りました。

【Microsoft Ignite で発表された最新情報】
・Teams:会議中にメモを自動生成してくれる Collaborative Notes、会議のリキャップ機能が統合される。
・Word:ユーザーの好み/興味ポイントを考慮しパーソナライゼーション。
・PowerPoint:Microsoft Designer を活用して AI による画像の自動生成。
・Outlook:会議の自動調整。


Dynamics 365 Copilot/Power Platform Copilot の紹介【金融機関向けご活用シナリオ】

本セッションでは、ビジネスアプリケーションにまつわる AI 活用について、マイクロソフトの瀬戸がデモンストレーションを交えながら解説をしました。

ビジネス統括本部 瀬戸 瞳


瀬戸は、はじめに業務アプリケーションに搭載された「Dynamics 365 Copilot」について紹介。「業務の中で日常的に利用できる AI として、手早く迅速にインサイトを得て、飛躍的に業務を効率化が可能。メール文章の作成、マーケティング向け配信メールコンテンツの作成、タスクの自動抽出を自然言語で利用できることを紹介しました。

Sales Copilot のデモンストレーション (営業担当者の例)

Dynamics 365 Copilot は、営業、マーケティングからカスタマーサービス、サプライチェーンに至るまでビジネス機能の全般に AI を活用して担当者をアシストする業務支援機能です。

瀬戸は、企業の営業担当者は、1 日のうち 66% ほどの時間をメールのチェックや返信などの事務作業に費やしているというデータを紹介。「営業担当者がお客様とのコミュニケーションや商談の成立に集中するために、Copilot (Dynamics 365 Sales) を活用して欲しい」と話し、メール作成のデモンストレーションを行いました。この機能の大きな特徴は、お客様の情報が CRM 内に登録されている場合、そのお客様の情報や紐づく案件情報を関連付けてメールを作成してくれる点です。また、「礼儀正しく」「友好的に」など文章のトーンについても指示をすることができます。

Customer Insights のデモンストレーション (マーケティング担当者の例)

次に、マーケティング担当者の例を挙げて Customer Insights のデモンストレーションを行いました。マーケティングの担当者がメールを書く際の文章の内容、差し込むべき素材、色合いといったメールの作成業務全体を AI が支援します(現在英語のみ対応)。

デモンストレーションの最後には、Dynamics 365 Customer Service のチャットボット機能を紹介。これまでは、決まった単語やフレーズに対する回答をその都度用意する必要があり、増え続ける単語を追加・修正・最新化する作業に、多くの工数を取られる点が課題だったといいますこの機能では、指定した Web サイトの URL をチャットボットの AI が解析し、わかりやすく文章に要約した上で回答をしてくれます。「例えば、コールセンターなどで外部の情報や社内のウェブサイトのナレッジベースを参照できるように設定することで、お客様とのリアルタイムチャットで AI が回答を生成してくれたり、お客様がウェブサイトを開いて解決させたりといったことが可能になります」(瀬戸)

※現在、Dynamics 365 Customer Service のチャットボット機能は英語のみ対応しています。

ローコードアプリケーション開発における Copilot の活用

続いて瀬戸は、ローコード、ノーコードでアプリケーション開発ができる PowerAppsとワークフローの作成ができる Power Automate で活用できる Copilot 機能について紹介しました。

Power Apps の Copilot 機能では、Excel ファイルからアプリを自動生成することが可能です。例えば、Excel データに「備品一覧リスト」「貸出日時」などの列を用意するだけで、画面上から社内の備品管理アプリを作ることができます。また、業務画面からは、新しいデータの登録、既存データの編集、参照、更新が可能。「アプリケーション開発に慣れていない方でも、自動生成されたアプリケーションの基礎となる部分を活用することで、迅速に効率的にアプリケーションを開発できます」(瀬戸)

次に、自然言語でワークフロー自動生成することができる Power Automate の機能について紹介しました。この機能では、文書で指示をすることによって AI が内容を解析。何をきっかけにワークフローを起動すればよいのか、その後のアクションとしてどういった処理を行えばよいのかを判別してくれます。「自分自身でワークフローを構築するのは少し敷居が高いと感じていたユーザーも、手元の業務を効率化するために、簡単なワークフローを作成できるようになります」(瀬戸)

金融機関向けの 2 つのシナリオ例

最後に、Power PlatformとAzure Open AI を組み合わせた金融機関向けのシナリオ例を ふたつ紹介しました。

ひとつ目が、質問文からキーワードを抽出して、社内文書から FAQ の回答を行う機能です。あらかじめ探したい資料の場所を指定しておくだけで、資料の中身まで検索をして最適な回答文書を自動的に作成して提案してくれます。

ふたつ目が、メールを自動化して取り込む機能。メール内の情報を AI に読み込ませ、必要な箇所だけを抽出し、人の確認後に、自動的に基幹システムや自社システム、RPA などに連携される仕組みを作ることができます。

瀬戸は、「マイクロソフトでは様々な業務シーンで Copilot を活用していただくことで、普段の業務を飛躍的に効率化するとともに、お客様対応などの時間を増やし、業務時間をより有効的にご活用できると考えております」と本セッションを締め括りました。

Responsible AI と Customer Copyright Commitment

最後のセッションでは、マイクロソフトの中島が、AI サービスを安心してお客様に使っていただくための取り組みについて紹介しました。

政策渉外法務本部 中島 麻里


責任ある AI の開発と利用

AI によるサービスは、業務効率化など人の負担を大幅に軽減してくれる一方、フェイク画像が不適切に利用されてしまうなど、不適切利用の課題もあります。テクノロジーを開発する事業者は大きな責任があると考え、マイクロソフトでは責任ある AI の開発と利用を宣言しています。2016 年には、サティア・ナデラが責任ある AI の取り組みについての方向性を発表。毎年少しずつ進化を重ねています。

マイクロソフトには、「責任ある AI における 6 つの基本原則」が用意されていますが、微妙な解釈のズレがあり、原則だけでは、実際の開発に落とし込むことが難しいと中島は話します。「AI 開発をするエンジニア、AI 製品を取り扱う社員がそれぞれの職責に応じて AI 原則を具体的に実施できるように、『ポリシーと基準』を定めています。さらに、定期的な社内トレーニングや、意識をしなくても自然と実践できるような社内ツールを作成し、それに対してテストを重ねています。日々内容をアップデートするガバナンスフレームワークを日々回しています」(中島)

次に、中島はマイクロソフトが Web サイト上で公開している Transparency Documents についてご紹介。責任ある AI 原則のひとつである「透明性」に関するツールで、Microsoft の AI テクノロジーを活用するときに避けるべきリスクなどを公開しています。「Microsoft 自身の透明性を高める目的に加え、皆さんに共有し、フィードバックをいただくことで、さらに改良していくエコシステムを作ることも大きな目標」(中島)

続いて、中島はマイクロソフトの AI 保証プログラムについて紹介しました。AI 保証プログラムは、リーガルレギュラトリーコンプライアンスについて、マイクロソフトの学びを共有するものです。「法規制対応に関してマイクロソフトもお客様をサポートしますという心意気のようなものと捉えていただければ」(中島)

Copilot によるアウトプットの権利の所在

最後に、中島は Microsoft の AI とデータについての方針について触れました。生成 AI からのアウトプットはお客様のものであり、Microsoft が権利を主張しないこと、インプットやアウトプットを AI モデルの基盤 AI モデルの学習には使用しないと話します。これは、Microsoft クラウドサービスの高度なコンプライアンス セキュリティ制御の生成 AI についても適用されます。

また、中島は 2023 年 9 月に発表した「Copilot Copyright Commitment (CCC)」についても言及。ユーザーやクリエイターが持つ以下の懸念について、製品を提供している Microsoft が積極的に解決、責任を負うのが適当との解釈を示しました。「アウトプットを使うことで、第三者の権利を侵害するのではないか」「自分の大切な作品が生成 AI によって権利を侵害されるのではないか」。

Copilot には、著作権を尊重するためのさまざまな安全装置を組み込んでいます。また、Copilot サービスそのものが権利を侵害している、もしくは Copilot のアウトプットが誰かの権利を侵害している、それらを理由に、お客様が第三者から訴えられた場合、一定の条件を満たしていれば、マイクロソフトがお客様を防御すること、万が一賠償金を支払うというようなことになった場合には、マイクロソフトがその金額を支払うことを説明しました。

ただし、これからの防御の対象となるには、以下の 3 つの条件を満たしていることが必要です。

1)組み込まれているコンテンツフィルターやメタプロンプトの制限など、権利侵害を防ぐためのシステムを無効化したり、回避したり妨害しないこと
2)アウトプットの利用時、必要に応じて変更を加えても良いが、誰かの権利を侵害するような利用はしない
3)インプットには、使用してはいけないデータを使わない。
※Azure Open AI は対象外ですが、12 月 1 日から Azure オープン AI も CCC の対象とするということを発表しました(一定の条件を満たす必要があります)

中島は、「機能面でも契約面でも、生成 AI のサービスは日々改良を重ねています。今後も更なる改良のため、ぜひ皆様にご利用いただいて、フィードバックをいただければと思っております」と本セッションを締め括りました。

セミナー終了後は、参加者、登壇者が参加する懇親会を開催

セミナー終了後には参加者、講演者が交流する懇親会が行われ、参加者と登壇者が意見を交わしました。登壇者を囲んでの談笑や、Surface のデモ機を使用した説明が行われるなど、一体感のある交流の場となりました。


オンデマンド配信

オンデマンド
前編
     
講演の挨拶~Microsoft の AI 全体戦略と Copilot for Microsoft 365 の位置づけ
金融サービス事業本部 業務執行役員 銀行・証券営業本部長 金子 暁
Copilot for Microsoft 365 の金融機関向けご活用シナリオ
テクニカルスペシャリスト 富澤 聡
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後編
Dynamics 365 Copilot/Power Platform Copilot のご紹介/金融機関向けご活用シナリオ
ビジネス統括本部 瀬戸 瞳
Responsible AI と Customer Copyright Commitment
政策渉外法務本部 中島 麻里