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業界

データドリブンで働き方を変えた i-PRO株式会社の取り組み事例 

 i-PRO株式会社は、セキュリティ監視、パブリックセーフティ、そして医療用イメージングの各分野に欠かせないセンシング・ソリューションの世界的なリーディングカンパニーです。2019年にパナソニック株式会社から事業分離する形で設立され、ネットワークカメラのブランド「i-PRO」を社名に取り込んでいます。2022年4月1日より社名を「i-PRO株式会社」へと刷新して、グローバルブランドとしての「i-PRO」を冠した製品群を開発し、世界中の市場に展開しています。そのi-PRO株式会社CIO の志賀 亜矢子様をはじめ、Digital Platform Promotionの閻 国君 (エン コククン) 様、松田 千春様、ユーザー部門からCorporate Planning, APAC Regionの本柳 栄一朗様、CPO Officeの北村 遼様、Security Japan SCMの山崎 健治様の6名に BI/DWH システムの導入効果についてお伺いしました。ユーザー企業様のお役職情報は取材当時(2023年)のものとなります。 

BI/DWH プロジェクトの背景 

まずこのBI/DWHシステムの背景として、2019年のパナソニック株式会社からの独立がありました。これを機に、それまで拠点ごとにバラバラだった基幹システムを統合し、件名管理 (商談管理) としてCRMシステムを導入しています。 

  • 複数の拠点に存在する、複数のシステムに散在するデータを統合管理できていない。 
  • 業務処理の多くにExcelが介在し、ExcelとBIの重複作業が多く発生している。その結果、事務工数が膨大となっている。 
  • BIシステム業務が属人化していて、基幹システム及びほかのシステムにおいて、本来の統合性を活かした導入ができていない。 
  • Excel主体の業務(特に経営管理、財務領域)ではコンプライアンスの側面が充分ではない。 

これらの課題を解決するべく、海外拠点を含む社内外の複数のシステムに散在するデータをDWHに統合すること、BIツールを統合することを新しいプラットフォームの要件としました。 

Power BI の選定と導入 

複数社を比較検討した BI ツールですが、その決め手についてプロジェクトを主導した閻氏は次のように話します。「Power BI は見た目もきれいで、ブラウザでグリグリ動かすことができ、多機能です。さらに Gartner 社の Magic Quadrant で、リーダーとして評価されています。Microsoft 365 E5 の全社導入を検討していたので、このライセンスで利用できる Power BI を使わない手はないと考えました。また、Microsoft 365や Power BIとの親和性、オープンソースの PaaSデータベースも利用できたため、Azureも採用する判断となるのも自然な流れでした。」 

また、Microsoft 365、Teams との連携で生産性を向上できること、多機能で見た目がきれいなこと、それが追加費用なく使用できることが、エンドユーザーにも驚きをもって評価されました。現在は Microsoft 365 E5 が全社導入され、全社員が Power BI を利用可能になっています。 

システム全体像 

 DWH と BI は 2名の社員と数名の委託先社員の皆様という少人数で、EMEA(欧州中近東), Japan, China(蘇州), Americas(北米、南米),APAC(アジア、インド、オーストラリア)の各拠点に順次導入しました。各拠点の担当者からデータを集める作業、集めたデータを統合して各拠点のBIツールに渡す作業、数字報告用の資料作成など、生産性を下げる作業をシステム化することができました。 

社長はじめ各部門がPower BI に基づいて会話し、要因と対策の議論に集中 

APAC リージョン担当の本柳氏は販売管理面での導入効果について、次のように語りました。「お客様の注文書の状況や、商品の手配、納入予定などが Power BI により一目でわかるようになりました。社長を含めて、営業、経理、SCM部門が同じレポートに基づいて会話しています。月次の販売見通し会議や週次の会議では、Power BI自体を見ながら話し合っています。以前は、パイプラインの状況を集計するだけで多くの時間がかかって疲弊していました。今は、月曜に Power BI を開けばすぐに先週の進捗状況が把握できるので、ターゲットに対するギャップがある場合は、その要因と対策の議論に集中できるようになりました」。なお、これを実現するため、常に最新の情報を管理するCRMから毎週月曜日のデータを蓄積するよう、DWHにて履歴保存機能を開発しています。 

また副次的な効果として、論理的な思考力が向上していると言います。「必要なレポートをどう実現するのか検討し、その内容をできるだけ具体的に伝えることを意識できるようになりました。データの取得方法や作成方法などを考えることによって、基幹システムやCRMへの入力の仕方、業務プロセスの整理にもつながっています。」 

会議に Power BI を導入して本質的な議論に集中、会議時間を短縮 

 製品担当 (CPO Office) の北村氏からは商品企画観点での導入効果を伺いました。商品のライフサイクルを適切に管理するためには、新商品について営業社員が正しく理解して販売するだけでなく、切り替え対象となる旧商品の情報も正しく把握し、仕入れを計画的に減らしてスムーズに新商品に切り替えていく必要もあります。以前はメールのバケツリレーで、情報が海外現地法人のメンバーまで行き届くまでに余計な手間暇がかかっていましたが、Power BI によりタイムリーな新商品情報/旧商品生産終了情報の共有ができ、新商品の市場導入がスムーズになったと言います。「商品ライフサイクル管理の一環として、各商品の生産中止計画を複数部門がまたがって定期的に会議をしておりますが、Power BI導入以降は、Power BI を見ながら会議することで本質的な議論ができ、必要なことだけに集中できています。実感として30分は会議時間を短縮できています。」 

「商品企画部門では、商品の形状、解像度等のスペック、発売時期や販売先など、数十の切り口で販売データを分析するダッシュボードを自分たちで作成しています。以前は同様のことを Excel で作っていたため、切り口を増やすために作りこむとファイルが重くなるし共有しづらい、どこかでファイルが分岐して、どれが正しいのか分からなくなるといった課題がありました。現在は必要な情報をすべてDWHに登録し、各ユーザー自身がその時々の目的に応じた切り口で、Power BI上で必要なデータ分析ができるようになりました。今後も継続してDWHに登録するデータを増やし、分析可能なデータの幅も広げていく計画です。」 

商品共有力の向上と業務プロセスの改善から、スキルアップ・モチベーションアップへ 

製造からお客様へ商品提供するまでのSCMの観点では、山崎氏が次のように効果を語ります。「以前はグローバル各リージョンの情報発信を待つことしかできませんでした。今はグローバル各市場の受注や在庫情報をリアルタイムに取得して、その情報を使って商品手配から材料購入まで連動することで、リードタイムの短縮、業務費用最適化ができ、商品供給力が向上しています。」このような直接的な効果の他に、業務プロセスを変えることにもつながっています。「以前は業務の専門性を優先した人員配置だったため、各担当間の情報の受け渡しに時間がかかっていましたし、担当外業務のことにコメントできませんでした。自分の情報は出せるけど、その先でどうするのかの判断はできないからです。現在は Power BI によって一人で把握できる情報が増えたので、市場・商品に軸足を置いて人員を配置しています。こうすることで、各自がサプライチェーンに責任を持って、自分で考えて判断して対応できるようになりました。例えば落札できなかった時にすぐに商品手配をストップするのか、あるいは他の販売に充てるのかなど柔軟に対応できるようになり、各担当で業務が回るようになっています。これによって、メンバーのスキルアップ、モチベーションアップなどを仕掛けていくことができているのは、大きなポイントです。」 

ユーザー部門によるレポート作成に加え、工数・費用の削減と他システム連携を実現 

システムの観点では、松田氏、閻氏から次のようなコメントがありました。「基幹系システム上でもレポート開発は可能ですが、専用スキルを持つ開発者に依頼しなければならず時間がかかってしまいます。Power BI により特別なスキルなしにレポート作成ができ、感覚的に1/3ほどに工数が削減されています。また、Power BI活用により、ERPライセンス費用の削減もできました」(松田氏)。「最初はITチームがレポートを作成していましたが、2022年からは各部署が自分たちでPower BIレポートを作成できるように、ユーザー部門へのレクチャーが開始されました。これにより、各部署は自分たちのニーズに合わせてレポートを作成することが可能になりました。さらにDWHは社内でのPower BI での利用だけでなく、社外向けグローバルカスタマーポータル、日本のECサイト、そして i-PRO Remo. (監視サービス) 、などのお客様向けサイトやサービスにも活用され、スピーディーなお客様へのデータ提供が実現されています」(閻氏)。

さらなる成長に向けて 

最後に、今回のヒアリングの場に同席いただいたCIOの志賀氏は、着任からの3年半を振り返って次のように話しました。「チームの目標が【会社のデータドリブンの働き方を推進する】ということで、まずはバラバラだった基幹システムのデータをグローバルで1つに統合し、データの種類も増やしました。社員一人一人の活動に役立てるには、データ統合だけでは効果が出ず、いつでもどこでも、欲しい見方で必要なデータを取り出せるようにならないと、データドリブンな活動になりません。それを Power BI で実現できて、本当に嬉しく思っています。」 

Power BIとDWHの直接的な導入効果だけでなく、業務プロセスの改善やスキルアップなどの成果、データドリブンな働き方への変革について、ビジネスリーダーや情報システム担当者の生の声をお聞きできました。CIOの志賀様は「まだまだ改善、向上の余地はありますけども、更なる飛躍の土台ができて良かったと思っています。」とおっしゃっていましたが、謙遜というより、まだまだ成長していくという意気込みを感じました。 

<i-PRO株式会社について> 

安心・安全への取り組みで、笑顔で楽しくすごせる社会の実現へ 

2019年10月、私たちは、パナソニックから、画像センシング事業を行う会社として独立いたしました。 

i-PROには、imaging・intelligence・integrationを提供するProfessionalという決意が込められています。 

近年、凶悪犯罪や災害による被害が多くなり、グローバルで更なる安全・安心の対策が求められています。 

笑顔で楽しく過ごせる社会には、わずかな不安の芽も見逃さないセンシング・ソリューションが欠かせません。 

私たちは高い映像技術と解析技術でこれを実現してまいります。 

今後とも、一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。 

https://i-pro.com/