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「最高裁判所」と書かれた看板が掲げられた建物が描かれています。空、植物、草、木を背景に屋外に設置されています。

Teams で始まる裁判手続き IT 化

時間と場所にとらわれないコラボレーションで裁判手続きを効率化

最高裁判所が推進する、民事訴訟手続きの IT 化において、Office 365 のコラボレーションツール Microsoft Teams が採用されました。
民事訴訟事件の争点整理から Teams が活用されることになります。
世界初となるこの事例について、Teams 導入の背景や今後のビジョンを 3 人のキーパーソンに語っていただきました。

INDEX

日本マイクロソフト株式会社 佐藤 知成

人の一生に寄り添う会社として日本に貢献する

日本マイクロソフト株式会社
執行役員 常務
パブリックセクター事業本部長
佐藤 知成

かつてないスピードで進められた裁判手続等 IT 化

今回の裁判手続等 IT 化は、かつてないスピードで進められました。内閣官房内に設置された「裁判手続等の IT 化検討会」が、「民事訴訟における IT 化を推進する」という方針を示したのが 2018 年 10 月、私自身が最高裁判所 (以下最高裁) の方と初めて IT 化に関する打ち合わせをしたのはそれから数か月後だったと記憶しています。その後、具体的なプロジェクトとして推進することになり、実証実験として模擬裁判が行われ、2020 年 2 月から、第 1 フェーズとして民事裁判の争点整理における Microsoft Teams (以下 Teams) の運用が開始されています。  政府の方針発表から 1 年半足らずで本番を迎えるというこのスピード感は、これまでの行政機関におけるシステム採用のイメージを一新させる、非常に大きなできごとだったと思います。

また、裁判というシステムは、いつ、誰が関与することになるかわからないものです。つまり、今回の裁判手続等 IT 化により、全国民約 1 億 2000 万人がメリットを享受できる可能性があるという意味で、非常に画期的なことだと考えています。誰もが簡単に操作できる Teams を活用することで、どこに住んでいても裁判に参加できる地域格差の是正、日々の生活に追われて余裕がなかったり、年齢を重ねて寝たきりだったりといった方の、生活環境の格差や年齢の格差を埋める仕組みになってほしいと期待しています。

日本全体にインパクトを与える価値ある実例

もともと、裁判手続等 IT 化の背景には、日本政府が 2018 年 6 月に提唱した「クラウド・バイ・デフォルト原則」があります。これは行政機関、中央官庁、自治体を対象とした、「積極的にクラウドを活用しましょう」という指針なのですが、まだ多くの組織・機関ではクラウド運用の検討が始まったばかりという状況で、IT 化のイメージからほど遠かった「裁判」という分野において、ほぼ日本全国を網羅する規模でクラウドが展開され、他に先んじて IT 化が実現されたわけです。クラウドの運用に際して多くの方が懸念されるセキュリテイの問題を、日本マイクロソフトのクラウドシステムを採用することでいち早く乗り越え、ファーストランナーとなられた最高裁の皆様の努力と英断には、大きな敬意を感じています。

この一連の流れは、行政機関のみならず日本全体に大きなインパクトを与え、IT 化の促進につながることが予想されますし、Office 365 ならびに Teams のソリューションがそこに貢献できたことは、「お客様と共に社会全体のデジタル変革を推進する」という命題を持つ日本マイクロソフトにとっても、非常に価値のある実例と言えると思います。

日本マイクロソフト株式会社 佐藤 知成

Microsoft Corporation の総力を結集して、日本に適したソリューションをつくる

テーブルに座っている男性。彼はスーツと眼鏡を着用しており、ビジネス環境を示しています

日本では、ほぼ全ての方が学校で教育を受け、社会に出て働き、医療機関を利用します。統計を見ると、医療や教育の分野では多くの施設で Microsoft 製品を利用いただいていますし、一般企業においても Microsoft 製品の利用率は極めて高いシェアを占めています。すなわち、私たち日本マイクロソフトは、「人の一生に寄り添う」会社であるという意識を常に持ち、サービスを提供していかなければなりません。

この裁判手続等 IT 化をきっかけとして、今まさに日本では、大きなパラダイムシフトが行われようとしています。日本法人にとどまらず、Microsoft Corporation が持つ知見とノウハウを、私たちが日本の社会に適応した形で提案すること、適応する機能が不十分なのであれば、Microsoft Corporation のエンジニアリングチームや開発部隊とも連携して、日本に適したソリューションをつくり上げていくこと。それこそが私たちが果たすべき責任だと思っています。

日本マイクロソフト株式会社 土井 崇

民事裁判における従来の課題と IT 化による変化について

日本マイクロソフト株式会社
政策渉外・法務本部
弁護士 (日本・ニューヨーク州)
土井 崇

民事裁判における、IT を活用した迅速化・効率化の流れ

日本の民事裁判における審理時間は、裁判所発表の統計によると、第 1 審で平均で 9 か月ほどかかります。医療保障などの複雑なものになると、2 年を超えるようなケースも珍しくありません。この審理時間の長さは、他の先進諸国と比べて必ずしも長いというわけではないのですが、日本政府が IT 化を推進し、迅速化・効率化を図ろうとしている流れのなかで、裁判手続等についても、今後ますます迅速化・効率化が必要とされることは間違いありません。

日本の民事裁判においては、これまでも折に触れて迅速化・効率化を図ってきた経緯があります。1996 年の民事訴訟法改正では、民事裁判の弁論準備手続等にテレビ会議システムと電話会議システムが可能になりました。また、2004 年の民事訴訟法改正で書面のオンライン提出ができる規定が設けられ、2006 年には督促手続オンライン システムが導入されています。

一方、海外に目を向けると、近年、欧米を中心に裁判手続等の IT 化が進み、アメリカ、シンガポール、韓国等では、IT 化した裁判手続等の運用が広く普及・定着しており、ドイツ等でも IT 化の本格的な取組みが進展しています。

このような状況下で、政府は 2017 年に「未来投資戦略 2017」を閣議決定して裁判手続等 IT 化の促進を検討する方針を打ち出し、それを受けて裁判手続等の IT 化検討会において IT を活用することで遠隔地からも裁判に参加できるようにする「e 法廷」、訴訟に関する書面の提出をオンライン化する「e 提出」、進捗や書面の管理をオンライン化する「e 事件管理」の「3 つの e」の実現が提言されました。ただ、現行の民事訴訟法下では実現が難しい部分もあるため、フェーズを分け、2020 年から、フェーズ 1 として現行法の中でも可能な「争点整理」におけるビデオ会議の導入・拡大と、IT ツールの活用が開始されることになりました。

「争点整理」の課題を解決するために Microsoft Teams を導入

争点整理とは、原告と被告の主張が一致していない部分 (争点) について、当事者と裁判官とで整理し、今後の裁判の進め方を決める作業です。複雑な訴訟の場合は争点が多くなるため、審理期間の多くを争点整理手続が占めることも多く、「争点整理で訴訟の行方が 7 割がた決まる」とも言われるくらい、大切な手続きとなります。ところが、原告と被告が遠隔地に居住している訴訟の場合、当事者や弁護士の移動時間や出張費用などの負担がかかるのに加え、当事者間の都合が合わずに期日が先延ばしされてしまい、ただでさえ時間のかかる審理期間がさらに伸びてしまう、といった問題を生じることもありました。

これまでも電話会議やテレビ会議システムを利用することはできましたが、「電話会議では互いの表情が見えず細かい感情が読み取れないし、発言のタイミングも図りづらい」、「テレビ会議システムは、最寄りの裁判所に赴かなければ利用できない」、いずれについても「書類や図面のどこを指しているのか正確に共有しにくく、食い違いが生じないようにするために苦労する」などの心理的・技術的ハードルがありました。

これらの課題を解決し、争点整理の迅速化・効率化を図るために、Microsoft Teams (以下 Teams) が導入されることになりました。Teams の Web 会議機能を利用することで、裁判所に行かなくてもビデオ会議をすることができるので、争点整理の話し合いのために移動や出張をする必要がなくなり、コストと時間が節約できます。また、画面共有機能により、書面や図面を指し示しながら会議をすることもできます。文書共有機能により、情報の共有がスムーズに行えることも期待されています。

日本マイクロソフト株式会社 土井 崇

利便性だけでなく働き方改革にもつながる Microsoft Teams

日本マイクロソフト株式会社 土井 崇

この裁判手続等 IT 化の流れは、当事者の利便性向上だけでなく、司法関係者の働き方改革を後押しする効果も期待できます。たとえば、争点整理における Teams の導入により、出張や書類管理の手間を減らせますから、弁護士を始めとする司法関係者の業務効率化につながるはずです。また、Teams を弁護士が自分の業務で活用することで、事務所業務の迅速化・効率化にも波及する可能性があると思います。

今後は、民事訴訟法改正の議論も含め、フェーズ 2 以降の検討が進むことと思います。日本マイクロソフトとしては、Teams に限らず、さまざまなソリューションを提案して、裁判手続等の迅速化・効率化と、司法関係者の働き方改革に貢献していきたいと考えています。

日本マイクロソフト株式会社 吉田 馨一

裁判 IT 化を強力に後押しする Microsoft Teams の優れた利便性と安全性

日本マイクロソフト株式会社
マーケティング & オペレーションズ部門
Microsoft 365 ビジネス本部
製品マーケティング部
シニアプロダクトマーケティングマネージャー
吉田 馨一

安全性と利便性が評価され、民事裁判に導入された Microsoft Teams

民事裁判 IT 化における「争点整理」への Microsoft Teams (以下 Teams) の導入は、世界的に見ても初めての取り組みです。Teams を使えば、遠隔地からも Web 会議に参加できるため、弁護士の出張コスト削減や、期日のすり合わせにかかる時間の短縮が実現でき、民事裁判における重要な工程である争点整理の迅速化・効率化を図ることが可能となります。

数ある Web 会議ツールのなかから Teams が採用された理由は、大きく 2 点挙げられると思います。ひとつは「安全なツールである」という点。デリケートな情報を扱う裁判では、情報漏洩リスクに備えた安全性の担保が欠かせません。Teams を含む Office 365 は、世界各国のコンプライアンスやセキュリティの認証基準をクリアするセキュリティ コントロールとプライバシー コントロールが組み込まれており、日本においても金融機関や地方自治体での導入実績があります。ですから、今回の導入にあたっては、特別な対応をしたわけではなく、すでにセキュリティが保たれている状態を提示して、最高裁に判断していただいた形になります。

もうひとつは、「簡単に利用できる点」です。発行された URL を 1 クリックするだけで会議に参加可能で、Microsoft Word や Excel、PowerPoint といった Office ファイルを会議ごとに共有でき、複数人による編集が可能で、次回以降の会議にもファイルを引き継げるという利便性を評価していただいたと思っています。

また、インフラ周りの充実も、大きなポイントだったと思います。厳密性が求められる争点整理の話し合いにおいて、クリアな音声や途切れない映像など、会議中にストレスを感じることなく「普通に使える」ことは、とても重要な意味があると考えています。

最高裁判所・日本弁護士連合会と緊密に連携し、運用をフォロー

日本マイクロソフト株式会社 吉田 馨一

今後のフォローアップ施策としては、裁判官からの問い合わせに関しては最高裁判所 (最高裁) の窓口にご対応いただき、技術的な質問がありましたら、私たちはその後方支援という形を想定しています。標準的な Office 365 のサポートや、Teams のサポートといったサービスは、あまねくご提供させていただく予定です。ただ、全国に 4 万人以上いる弁護士全員に対して、十分のサポートが行き渡らないことも想定されます。日本マイクロソフトは、日本弁護士連合会 (日弁連)、各弁護士会と連携しながら、可能な限りバックアップしていきます。まずは導入にあたり、Teams による Web 会議が導入される裁判所に所在を置く弁護士会に対して Teams の説明会を実施検討しています。実際に Teams に触れていただくだけでなく、これまで私たちのソリューションをご利用いただいたお客さまの活用事例も展開し、理解を深めていただく予定です。

Microsoft Teams の機能は、IT 化をさらに後押しできるはず

裁判手続等 IT 化の第 2 フェーズ以降においても、Teams の機能がお役に立てると考えています。法律上の制約もありますし、現状は実現可能性が低かったり、不透明だったりするところはありますが、例えばレコーディング機能やオンライン アーカイブ機能を使えば、争点整理中に Teams のなかで交わされた内容が証拠として使えるようになる可能性がありますし、過去資料の検索も、オンライン上で簡単に済ませられるようになります。翻訳機能も進化し続けていますから、日本語を母語としない方々の利便性向上にも役立てていただけるはずです。Teams の幅広い機能、柔軟な拡張性は、今後の裁判手続等 IT 化をさらに後押しできる可能性を秘めていると思っています。

また、Teams は、法曹業界における働き方改革のためのツールとしても有効だと考えています。もともとチームワークのためのアプリケーションなので、争点整理だけではなく日常業務、例えば弁護士事務所のアシスタントの方や、取引先とのやり取りにも活用していただけるはずです。引き続き弁護士や関係者の皆さんのニーズをくみ取り、便利に使っていただけるよう提案をしていきたいと思っています。

ただ現状として、弁護士事務所のなかで Office 365 を導入している事務所はごくわずかというデータもあります。これまで紙ベースでの業務が中心だった業界ですので、PC 自体にあまりなじみのない方もいるかもしれません。まずは基本的なことからご理解いただき、Teams の利便性を知っていただくこと。そのうえで、やがては業界全体の働き方改革につなげることを目標として、丁寧にサポートしていきたいと思います。

日本マイクロソフト株式会社 吉田 馨一

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    日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務 パブリックセクター事業本部長 佐藤 知成

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    日本マイクロソフト株式会社 マーケティング & オペレーションズ部門 Microsoft 365 ビジネス本部 製品マーケティング部シニアプロダクトマーケティングマネージャー 吉田 馨一

  • 国立航空宇宙博物館前の彫像群。彫像は屋外にあり、空、建物、いくつかの木々を背景に設置されています。

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    (公財) 日弁連法務研究財団専務理事・ (一社) 日本法律家協会副会長 (歴任) 菊地総合法律事務所 弁護士 菊地 裕太郎

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  • 大都市圏のスカイラインを描いた高層ビルが立ち並ぶ都市

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