株主様、お客様、パートナー様、および従業員の皆様へ
Microsoft は 2008 会計年度の決算報告で満足のいく結果を残すことができました。多岐にわたる製品ライン全体を通じて重要な革新テクノロジを発表し、将来の成長のための大きな礎となる数々の投資を行うことにより、本年度を成功裏に終えることができましたことをご報告いたします。
中核となる Windows ビジネスおよび Office ビジネスの継続的な成功や、すべてのビジネス グループで二桁成長を達成したことにより、2008 会計年度の収益は 604 億ドルに達しました。前年度比 18% の増加です。営業利益は 21% 増加し、総額で 225 億ドル、1 株当たり利益は 1 ドル 87 セントとなりました。当社は、そのうち 165 億ドルを株式買い戻しおよび配当金によって株主様に還元しました。
2008 会計年度を通じて、Windows Vista が非常に多くのユーザーに受け入れられ、1 億 8 千万を超えるライセンスを販売し、2007 Microsoft Office system の販売ライセンス数も 1 億 2 千万を超えました。Microsoft Office SharePoint Server 2007 は 1 億のライセンス販売数を記録し、売り上げは 10 億ドルを超えました。
この 1 年間、Microsoft は多岐にわたる革新テクノロジを市場に投入しました。Microsoft Windows Server 2008 および Microsoft Visual Studio 2008 のみならず、Windows Vista Service Pack 1 をリリースし、検索テクノロジやオンライン広告テクノロジにおいても大きな躍進を遂げました。また画期的な新しいデバイスとして、テーブルトップ コンピューティングをサーフェス コンピューティングへと転換する Microsoft Surface を発表しました。これにより、ユーザーは、数多くの店頭やホテルなどに設置された Surface のディスプレイを指でタッチする、またはなぞることによって操作したり、ディスプレイの上に物理的な物体を置くことなどによって、デジタル コンテンツを取り扱うことができます。医療業界においても、新しい製品やサービスを発表しました。Microsoft 製品の相互運用性を強化し、開発者様、パートナー様、お客様、競合他社の皆様の選択肢を増やすために、テクノロジだけでなくビジネスの手法を変革して、Microsoft 製品の開放を推し進めることを発表しました。
また、当社の多岐にわたる刷新の取り組みの 1 つとして主要な市場に投入する製品およびサービスを強化するために、重要な戦略的買収を発表しました。たとえば、AdECN、Rapt、および YaData の買収は、広告主や出版社にとっての最先端テクノロジの可能性を当社の広告プラットフォームにもたらします。Multimap、Fast Search & Transfer、および Farecast の買収により、Microsoft のコンシューマおよびエンタープライズ向け検索サービスに新しい画期的なテクノロジが追加されました。世界に先駆けたモバイル コンピューティングへの取り組みとしては、モバイル ミュージック エンターテイメント サービスの主要プロバイダである Musiwave、コンシューマ ハンドセットを機能強化するソフトウェアとサービスを提供する Danger、そして、モバイル データのバックアップと復元のパイオニアである MobiComp を買収しました。Calista Technologies と Kidaro の買収により、重要な仮想化市場において、当社は引き続きリーダーとしての存在を不動のものにしています。
2008 年 2 月、当社は Yahoo! に対して買収を提案しました。この取引提案は、当社のオンライン検索およびオンライン広告に関する戦略を促進するためのものでした。しかし、Yahoo! 側の取引条件がもたらす経済的側面と、規制審査の中、パートナーシップを早急に推し進め、2 社を統合する必要性を慎重に検討した結果、この取引は株主にとって最良の利益とならないと判断しました。この提案は白紙に戻りましたが、当社がオンライン検索およびオンライン広告の分野で業界をリードしていく決意は変わりません。Microsoft では、適切な部署に最適の人員を配置して、当社を成功へと導くための投資を続けていきます。
革新による変革
Microsoft の成功を支えているのは、革新に対する当社の姿勢です。この業界で新しいテクノロジの飛躍的進歩を実現するために、Microsoft ほど研究開発に投資している、または世界中のさまざまな分野の優秀な研究者、科学者、およびエンジニアを確保している企業は他にありません。
2008 年の研究開発費は 82 億ドルに上り、2007 会計年度と比較して、およそ 15% 増となっています。この年、ブリティッシュ コロンビア州のバンクーバーに新しいソフトウェア開発センターを開設し、ドイツのアーヘンでは、Microsoft Embedded Systems Development Center を設立しました。また、ワシントン州レッドモンドの Microsoft Research 内に Internet Services Research Center を設けました。さらに、マサチューセッツ州ケンブリッジに Microsoft Research New England を開設しました。当社の 6 か所目となる主要研究施設である Microsoft Research New England では、コンピュータ科学者と社会科学者が共同で新しいコンピューティング エクスペリエンスとオンライン エクスペリエンスの開発に取り組んでいます。
2008 会計年度は、製品およびテクノロジ全般に正当な変革を施し、お客様にとって価値の高い新しい機能をリリースしました。Windows Server 2008 のリリースでは、1 台のコンピュータ上での複数のオペレーティング システムの実行を可能にする Microsoft Hyper-V というテクノロジを導入しました。"仮想化" と呼ばれるこのアプローチは、企業の経費とエネルギー消費量の削減に役立ち、コンピューティング機能の提供や管理の方法を一新します。
当社は、変化を続けるビジネス環境に合わせて自動的に調整できるように柔軟性とインテリジェンスを備えた動的な IT システム構想の実現に取り組んでいますが、Hyper-V の導入は、この実現への大きな前進を示す一例です。2008 会計年度にリリースされた新しい Microsoft Systems Center 製品は、IT 企業がビジネス プロセスを最適化し、より快適なコンピューティング サービスを提供するための支援をします。
また、ソフトウェア+サービス構想の推進と、デスクトップ ソフトウェアおよびサーバー ソフトウェアの利点とインターネット ベース サービスの柔軟性を組み合わせた革新的な技術の提供に全社的に取り組んでいます。2008 会計年度においては、検索アルゴリズムの改良、そして検索結果の精度および検索目的の理解度の向上により、中核となる検索テクノロジが重要な進歩を遂げました。新しい垂直検索のカテゴリを設けることにより、商業、エンターテイメント、ショッピング、地域に関する検索、および医療に関する質問の検索結果の精度が向上しました。Live Search for Windows Mobile では、音声入力や、車のナビゲーションでリアルタイムの交通情報に基づいて動的にルート変更するなどの新機能が追加されました。Microsoft Search Server Express 2008 により、ビジネス データの検索が最適化されます。
当社のソフトウェア+サービスへの取り組みは、検索だけにとどまりません。2008 会計年度、当社は先進の IT 機能を駆使する企業向けに、重要なサービス対応の製品を提供する一連のオンライン サービスを発表しました。Microsoft Exchange Online、Microsoft SharePoint Online、Microsoft Office Communications Online、および Microsoft Dynamics CRM Online などのオンライン サービスにより、ユーザーは、ビジネス アプリケーションを自社で展開して管理するか、Microsoft のパートナーまたは Microsoft によるホスティングを行うかを柔軟に選択できるようになります。
開発者や Web デザイナによる Web および Windows 向け次世代のエクスペリエンスとアプリケーションの作成を支援するため、2008 年に Microsoft Expression 2 を発売し、Microsoft Silverlight 2 のベータ版をリリースしました。
以上の他に 2008 会計年度に発表された革新的な製品としては、Microsoft Windows HPC Server 2008 と WorldWide Telescope があります。HPC Server は、急成長を遂げる高性能コンピューティング市場向けに設計されたサーバー オペレーティング システムで、WorldWide Telescope は、ユーザーが自らのコンピュータを通じて宇宙を探索できる Web アプリケーションです。
新興市場と機会の到来
2008 会計年度は、多岐にわたる市場において重要な新規開拓機会に重点的に取り組んできた結果、当社の各ビジネスは大きな成長を遂げることができました。たとえば、コンシューマ テクノロジへの投資が実を結んだ結果、エンターテイメント & デバイス部門の売り上げは 34% 増加しました。販売ユニット数が 1,900 万を超えた Xbox 360 コンソールと、今やユーザー数が 1,200 万を超える Xbox Live が原動力となり、この年のエンターテイメント & デバイス部門の営業利益は 81 億ドルに達しました。"Halo3" は、発売後 1 週間で、3 億ドルというトップの売り上げを記録しました。
当社は通信のデジタル化の分野でも重要な機会を見いだし、職場内のコミュニケーションを効率化する Microsoft Office Communications Server 2007、Microsoft Office Communicator 2007、および Microsoft Live Meeting など、新しいユニファイド コミュニケーション ソフトウェアを発表しました。また、組織内のあらゆるレベルの人々が簡単にビジネス インテリジェンスにアクセスできる新しいテクノロジを提供する Microsoft Office PerformancePoint Server 2007 も発表しました。
医療の分野にも重要な機会が存在します。2008 会計年度、当社は Microsoft HealthVault と Microsoft Amalga Family of Health Enterprise Systems を発表しました。HealthVault は、医療情報の管理を効率化するサービスとアプリケーションのプラットフォームを提供します。Amalga は、医療機関における医療から運用および財務に至る、企業規模のソリューションがまとめられたものです。これら 2 つの製品によって、Microsoft は医療業務を向上させるデジタル テクノロジ イノベーション市場におけるリーダーとしての立場を確立しました。
オンライン サービスとオンライン広告は Microsoft にとって非常に重要な機会です。広告主が顧客にリベートを支払う Microsoft Live Search Cashback などの製品を率先して市場に投入しながら、ユーザー エクスペリエンスとビジネス モデルの革新を通じて検索テクノロジを改革するために、研究開発への投資を継続していきます。2008 会計年度、aQuantive の買収と、広告主および出版社向けソリューションの強化により、オンライン広告の売り上げは 31% 増となりました。
Microsoft の強みの 1 つはグローバル ビジネスの体質です。数多くの主要な新興市場でも、大きな成長が見られました。BRIC 諸国 (ブラジル、ロシア、インド、中国) の売り上げは 54% 増を記録しました。さらに、中央ヨーロッパと東ヨーロッパでも、2008 会計年度の売り上げは 64% 増加しました。ブラジルでの好調な結果も受けて、ラテン アメリカでの売り上げはおよそ 30% 増を記録しました。また、ノルウェー、スペイン、オーストラリア、カナダ、およびドイツでは 25% 以上増加するなど、数多くの先進国においても売り上げが大幅に増加しました。全体的には、2008 会計年度の当社の売り上げは、45 か国で 25% 以上の増加を記録しました。
地域社会のサポートと多様化
テクノロジの力を活用して、地域社会が繁栄し、世界中の人々が自らの潜在能力を発揮できるようにすることは Microsoft の使命の中核をなすものです。2007 年、当社はいまだに情報技術の恩恵を享受できていない、およそ 50 億の人々のために、デジタル デバイドを解消するための中心的取り組みである Unlimited Potential プログラムの拡大を発表しました。UP プログラムの進展の一例として、2008 会計年度には、当社の Partners in Learning プログラムが 101 か国 1 億人以上の教師と生徒が参加するまでに成長しました。
社会の多様化と一体性にも Microsoft は本質的な価値を見いだしています。当社では、全社的にすべてのレベル、そしてすべての業務内容において多様化の促進に努めています。 また、女子高校生がテクノロジ分野でのキャリアについて学ぶ機会を提供する DigiGirlz などのプログラムを通じて、女性や社会的少数派の人々がテクノロジ業界に参加できるように働きかけています。さらに、National Society of Black Engineers などの社会的少数派の人々や女性を中心とする組織と共に、多様化する地域社会へのテクノロジの浸透に取り組んでいます。
将来の成長に重点を置く強いリーダーシップ
新しい会計年度の開始にあたり、Microsoft は 2009 年以降も大きく成長を続ける理想的な立場を維持していると信じています。当社を取り巻く環境の気運は高まっており、現在開発中の数々の優れた製品とテクノロジをかかえています。さらに重要なのは、社内の各レベルに配置されている優れた人材です。彼らは、目の前にある機会を将来の大きな成功に変える戦略的な洞察力を持ち、経験豊かな強力なリーダーです。
チーフ ソフトウェア アーキテクトであるレイ オジーと最高研究戦略責任者であるクレイグ マンディが当社の技術戦略の指針を示し、新しい世代のリーダーたちがオンライン広告、検索、ビジネス戦略、およびマーケティングなどの分野で指揮をとっています。当社は、人々の生活を改善し、Microsoft、お客様、およびパートナーの皆様に新しい機会をもたらす革新的な製品とサービスを皆様のお手元に届ける努力を続けてまいります。
30 年以上にわたり、Microsoft は人々がコミュニケーションをとり、アイデアを共有し、ビジネスを管理するなどの方法を根本的に変えた重要な革新を提供することにより、大きな成功を収めてきました。現在は、業界の歴史上、最も刺激的な時期にあります。コンピューティングは、ますますパワフルになり、小型化が進み、より求めやすい価格になっています。コンテンツ、コミュニケーション、そしてメディア全体がデジタルに移行しています。当社がコンピューティング エクスペリエンスを創り上げ、提供する方法も、ソフトウェア+サービスの組み合わせにより変わりつつあります。
デジタル テクノロジのパワーを活用して、これからも世界をより良いものに変えていくこと、当社はその機会があることに意欲をかきたてられています。当社がこれらのすばらしい可能性を追求できるのは、皆様からのご支援のおかげです。感謝いたします。
ウィリアム H. ゲイツ 3 世
会長
スティーブ バルマー
最高経営責任者 (CEO)